「競技人生やり切った」“ジュラシック木澤”、最後の舞台は初の世界戦 仕事との両立含め走り続けた30年間
12月17日から19日、東京・有明コロシアムにて開催された「IFBB世界フィットネス選手権」及び「IFBB男子ワールドカップ」。最終日には日本ボディビル界のレジェンド・木澤大祐が登場し、85kg以下級で銀メダルを獲得した。 【フォト】集大成の舞台に立つジュラシック木澤 迫力のステージを披露
「本当に競技人生やり切ったなと思います。ちょうど50歳になる年で、すべてが区切りよく。今年は人生最高の年でした」と大会後に率直な心境を語った木澤。その言葉は今シーズンのみならず、走り続けた現役生活30年を物語っているように思えた。 日本選手権で通算20回ファイナリスト入りする偉業を達成したレジェンドは、現役引退を表明した今年、最後の日本選手権で優勝。集大成となる舞台で有終の美を飾った。大目標を叶えたからこそ燃え尽きた感もあったと振り返るが、出場権を獲得したワールドカップへの挑戦を決意。一度頂上に登ってからの調整をやり切り、今大会では迫力満点のステージでファンを歓喜させた。 長く現役を続けてきた木澤だが、意外にも世界選手権やワールドカップへの出場は今回が初めてだ(アジア選手権には出場歴あり)。サラリーマン時代に何度か出場のチャンスはあったものの、仕事の事情で叶わなかったと言う。仕事と競技との両立など、多くの人が直面する問題に向き合って結果を残してきたからこそ、木澤のステージは人を魅了し、ファンも絶えないのかもしれない。
「サラリーマン時代のきつい経験があるからこそ、今の生活があると思っています。当時、楽にトレーニングしていたらここまで競技をしていないかもしれないし、ファンの方もここまでいなかったかもしれないです。そういう意味で僕が歩んできたトレーニング人生に悔いはないです。自分は学生時代から学業をおろそかにしてトレーニングしたりしていたので、社会的には良くないかもしれないですけど、それがあって今の自分があります。何が正しいかは人それぞれで結果は誰にもわからないですから、自分の好きなことをとことん貫く人生が自分は好きですね」 今年の日本選手権は20代の選手が6人ファイナリストに入ったこと、そして長くトップ戦線を走ってきた木澤の引退もあり、ボディビル界に世代交代の波が訪れている。そんな状況には「今年は本当に大きく変わったと思います。僕らベテラン選手は今までの経験を活かして、ジュラシックカップの開催も含めて、若い選手がボディビルをやっていてよかったなと思えるような業界にしていきたいと思います」と語った。 「来年は競技者としての目標はなくなりますが、今までみたいにセミナーをやったり、選手の育成、ファンサービス、あとはジュラシックカップの開催ですね。そのあたりをしっかりやっていきたいと思います」 “ジュラシック木澤”の選手生活は今大会をもって幕を下ろすが、伝説がここで終わるわけではない。今後も業界の発展に不可欠な男として、熱きボディビル界を支えていくだろう。
取材・文/森本雄大 写真/木村雄大