大阪市で「総合区」導入の動き 「都構想」とどう違うの?
「総合区」=区長に予算提案権や人事権
総合区は2014年の地方自治法の改正により、政令指定都市が新たに設置できるようになったものだ。総合区のポイントは、区長を一般職から議会の承認が必要な特別職に格上げし、予算提案権や区職員への人事権を持たせる点だ。市役所の一部署にすぎない今の行政区に権限を委譲し、地域内分権をすすめようというのが狙いである。住民に直接、接するところに権限と予算を渡す分権の趣旨に沿ったもので、今の行政区の課題を解決する一つの策といえる。 だが、抜本的な解決策とは残念ながらいえない。総合区に最終決定権がなく、また、区民の民意を吸い上げる建前の議会も設置されなるわけではないからだ。 では、総合区制度が新たに用意された背景には一体、何があるのだろうか。 「平成の大合併」の産物として全国各地に政令指定都市が誕生した。その数、なんと20。国が人口要件を70万以上に緩和し、政令指定都市の量産を図ったのである。その思惑通り、政令指定都市を目指して周辺市町村と合併する都市が相次いだ。財政運営に不安を抱いていた小規模自治体の中には「寄らば大樹」とばかりに近隣の中心都市に駆け込むところもあった。 こうして新潟市や相模原市、静岡市、浜松市、堺市、岡山市、熊本市など新たな政令指定都市が次々に生まれた。それぞれの市域は一気に拡大し、編入合併された旧市町村は行政区の中に埋没していった。 ところが、政令指定都市になったものの市域の広大化により、民意が市に届きにくいという不満が広がるようになった。昔との違いに落胆し、後悔の念を抱く人たちの存在である。そうした人たちの声を受けて総合区が新設されたと推測する。地域内分権を進めようというその趣旨に異論はないが、それではなぜ、合併して政令市になったのかという疑問も生じる。
総合区で大阪の課題は解決する?
では、大阪市の場合、新たに「総合区」を導入することにより、地域の活性化や行政サービスの質の向上につながるだろうか。結論から言うと、いまの24行政区をそのまま総合区に移行させるだけであったら、それほど意味はない。もともと狭いエリアをさらに24に細分化した今の行政区を再編統合した上で、総合区に衣替えする必要があるからだ。市域が大阪市の倍もあり、人口も100万人ほど多い横浜市の行政区は18である。大阪市はその半分くらいが適正数なのではないか。 大阪市の行政サービスは全国トップクラスの手厚さとなっている。豊富な税収と高効率の条件下にある恵まれた地域性、そして福祉に力を入れて来た市政の伝統によって培われたものだ。行政区ごとに選ばれる市議会議員が住民の要求をこまめに行政に伝え、サービスを積み上げて来たのである。