待望白星の首位町田、不調脱却へ“記憶”にアプローチした黒田監督「我々のサッカーはこれだから強かったんだよねと」
[8.17 J1第27節 町田 4-0 磐田 Gスタ] 首位に立ちながらも直近3試合勝利のなかったFC町田ゼルビアが17日、今季同期昇格のジュビロ磐田を4-0で破り、4試合ぶりの白星を収めた。試合後、記者会見に出席した黒田剛監督は「優勝や首位という言葉は一切使わないでいこう」という意識を共有し、この一戦に臨んでいたことを明かした。 【写真】「可愛すぎて悶絶」「金メダル」「新しいジャケ写かと」大物歌手が日本代表ユニ姿を披露 J1昇格初年度ながら前半戦を首位で折り返し、史上初のJ1初昇格初優勝に突き進む町田だが、パリ五輪組を欠いて臨んだ7月20日の横浜FM戦に敗戦。その後の中断明けもC大阪にドロー、湘南に敗戦と成績が停滞していた。今節は前回対戦で0-2で敗れた磐田が相手、敗れれば首位陥落の可能性があるということで、大きなターニングポイントとなり得る一戦だった。 そうした中、町田は立ち上がりからロングボールを使って相手を圧倒し、試合の主導権を握った。そして前半4分には、いずれも今夏加入のDF杉岡大暉の左CKからDF中山雄太がヘディングシュートを決めて先制に成功。その後は一時磐田にボールを握られる時間もあったが、高さを活かしたサイド攻撃で押し返し続け、前半のうちにFWエリキとMF藤本一輝の両サイドハーフが得点し、3-0で前半を終えた。 黒田監督によると、内容が大きく改善された理由は試合に向けた準備期間にあったという。 「ここ3試合なかなか勝ちゲームができず、いろんな不安や葛藤と戦いながらの期間を過ごしてきたが、選手たちにはもう一度、町田の強かった時、勝っていた時の映像を見せた。攻守において誰に何と言われようとアグレッシブで、トランジションの速いサッカー、そしてリスタートでもっとパワーを持っていくことも含めて、もう一度、我々のサッカーはこれだから強かったんだよねという記憶を蘇らせようと準備してきた」 また同時に目指したのは「首位」「優勝」という立場からいったん自由になることだった。 「首位だとか、優勝だという言葉が脳裏をよぎるたびに我々が固さを持ったり、自分たちが本来やってきたものを志向することなく、緩み、甘えにつながってきたことを厳しく捉えながら1週間チームづくりをしてきた。その成果もあって、立ち上がりから完全に相手を飲み込むことができたし、その中で1点を取れたということで、これが町田の強さだよねというのをあらためて選手たちがピッチの上で実感できたんじゃないかと思う」 3-0で迎えた後半も点差に甘んじることなく、チームコンセプトである「無失点」の狙いを徹底。チャンス自体は前半よりも少なかったが、藤尾のPKでさらに1点を追加し、4-0の勝利に持っていった。実際に試合後、磐田の横内昭展監督は「相手のやりたいこと、やろうとすることを徹底してやられて、それに対応できなかった。それに尽きる」と敗戦の弁を述べていた。 大きな手応えになる白星を経て、今後も同様の姿勢で戦っていくつもりだ。 黒田監督は「選手たちに試合前に話をしたが、優勝とか首位という言葉は一切使わないでいこうと。自分たちのサッカーに立ち返って、自分たちがいかに不甲斐ないサッカーをしていたかをもう少し見返していこうと。そこにしっかりとベクトルを合わせてみんなで奮起しようとスタートした」とこの一戦の成功体験を示しつつ、「まだ11試合あるので、ここは上を見ずに、目の前の一戦に全てを賭けるということでやっていきたいと思う」と宣言。「新しい町田として新しいメンバーも入って、いろいろと入れ替わったが、選手たちもこのチームで勝てるのか、優勝できるのかはすごく不安材料としてあったと思う。そこは今日のゲームで一つ自信に変わったと思う。我々スタッフはこの彼らのモチベーションや自信をしっかりと継続させながらやっていかないといけない。決して緩むことなく、これをベースにして強い町田を作っていきたい」と前を見据えた。 また次節で対戦する新潟も前回対戦で敗れた相手とあり、油断の余地はない。指揮官は「もう一回、再スタートを切るための1試合目としてはすごく上出来だった。ただこれに油断することなく、もう一回締め直し、反省材料をしっかり洗い出しながら、さらに引き締める作業をしたい。次の新潟には前回負けているので、ここもシーズンダブルを喰らわないようにしっかり町田のサッカーで戦っていきたいと思う」と力を込めた。