美容外科医の投稿で大炎上…国内外で異なる「献体」事情とは 医学において“新鮮な遺体”が解剖できる意味深さ
先日、美容外科の女性医師が、解剖台に並んでいる多くの献体、つまり人間の遺体の前で写真を撮影したとして、これが炎上した。献体にはモザイクがかかっていたとはいえ、笑顔のマークやピースサインをしている女性も映っていたことから、倫理観が問われるとして、大きな物議にもなった。 【映像】年々増える美容医療に関するトラブル(グラフ) そもそも献体とは、医学や歯学の研究、教育、発展に役立ててほしいと自分の遺体を無条件、無報酬で提供すること。日本ではホルマリン漬けになっている献体を解剖するケースが多いといい“新鮮な遺体”を解剖するには海外に出向かなければならず、また新鮮な遺体と、そうでないものとでは、やはり得られる経験にも大きな差が出るという。 「ABEMA Prime」では、高須クリニック名古屋院院長・美容外科医の高須幹弥氏、愛知医科大病院・医師の後藤礼司氏を招き、なぜ今回、これほどまでに炎上するに至ったのか。また献体に関する国内外の意識の違いなどを聞いた。
■グアムで行われた「解剖ツアー」
まず今回、グアムで行われた解剖研修に臨んだ美容外科医が「新鮮なご遺体を解剖しに行く」などの文言やピース写真などをSNSにアップした件について、高須氏は「やっぱりありえない。献体される方というのは、医学に貢献したいとか、世の中の役に立ちたいという気持ちを持って献体されるわけだ。それに対しては、私どもは誠意を持って解剖させていただくという気持ちでやらないといけない。レジャー気分でピースをしてというのはあり得ない。辞めていただきたい」と苦言を呈した。また後藤氏も「献体というのは本当にかなり神聖なものだし、我々はかなり学ぶことが本当に多い。『ありがとうございます』と言ってやることが本当に常だ。それがこのような形で出てしまったというのは非常に残念だ」と、口を揃えた。 国内では、あまり献体は行われていないのか。高須氏は「『fresh cadaver』といい、日本語なら『新鮮なご遺体』という表現になり、僕らでも普通に使う表現だ。通常、日本の医学部でやる場合は、ホルマリンに漬けたご遺体で解剖させていただく。その場合は筋肉とか血管とか神経が、ちょっとパサパサしている状態だ。fresh cadaverだと血管の中に血液が入っていたり、筋肉もみずみずしくて、生きている人間に近い状態なので、手術のトレーニングをするためだったらfresh cadaverの方がより良いトレーニングができる。fresh cadaverでの解剖でのトレーニングが、なかなか日本では整った環境がなくて、むしろアメリカの方が進んでいる。美容外科業界だと、大体年に1回とか、ハワイとかグアムでツアーを組んでfresh cadaverの解剖をしようというのがある。今回もその一つだ」と説明した。 また、後藤氏は「僕の場合は保険診療の臨床医なので、亡くなった後に病理解剖等、例えば死因の究明だったりとか、いろいろ後学のためにとか、いろいろな理由でお願いするケースだ。なので、今の表現で言うと、おそらく死後間もない方に僕らは立ち会う。自分たちが解剖をやって良い資格がある。なので、僕は立ち会って勉強させてもらうというのが常だ」と加えた。 美容外科医が、献体に触るというのは、なかなか医療に縁がない一般人からすればイメージしにくいところだが、高須氏は「解剖のトレーニングをさせていただいた方が、手術の腕は上達する。僕なんかは、形成外科のトレーニングをして、専門医を取ってから美容の道に進んだ。その専門医の過程で、がんセンターでがん治療をしたりとか、クラニオフェイシャルサージャリーと言って、顔面とか頭蓋骨をいじる形成外科の手術をしている。その時に同時に解剖の勉強をする。今問題になっている直美(ちょくび=直接、美容外科医になるの意)というのは、研修医の2年間を終わってすぐに美容に行くので、そういう形成外科でのトレーニングというのが省略されてしまっている。なので、お亡くなりになったfresh cadaverで勉強させていただくという形で、そういうツアーが結構流行っているという状態だ」と説明した。