決め手は…検察が開示した287点の“新証拠”に 福井・中学生殺害事件の再審開始
袴田巌さんの無罪確定から2週間。今度は38年前に福井市で女子中学生が殺害された事件で、殺人の罪で服役した前川彰司さん(59)に対し“再審の扉”が開かれました。 【画像】決め手は…検察が開示した287点の“新証拠”に 福井・中学生殺害事件の再審開始 ■検察が287点の新証拠開示 有罪の根拠の一つとなった男性の供述調書 「事件当日、歌番組を見てから外出し、血の付いた前川さんを見た」 男性が見たという歌番組の内容が、事件当日には放送されていなかったことが、新たに開示された捜査報告書から判明しました。 検察は、日付が違うことは裁判中に把握していたものの、その報告書を裁判所に提出していませんでした。 名古屋高裁金沢支部が「供述は信用できないと判断」し、再審開始が決定しました。 ■証拠開示の“規定なし”が課題 これまで裁判で出てこなかった証拠が、なぜ今回開示されたのでしょうか。 弁護団はおととしの再審請求にあたり、検察側に証拠の開示を求めましたが拒否されました。しかし、裁判所が証拠の開示を強く求め、検察側がこれに応じて、捜査報告書など287点の証拠を開示しました。 ただ、裁判所が求めれば証拠を開示するとも限りません。刑事訴訟法に詳しい龍谷大学法学部・斎藤司教授はある問題点を指摘しています。 龍谷大学法学部 斎藤司教授 「裁判官が証拠開示の勧告をすることはできるが、刑事訴訟法では再審における証拠開示の規定がない。裁判官の裁量や検察の対応によって差が出てしまう」 法整備を目指す動きも出ています。超党派で結成した議員連盟は、法改正を求める要望書を今年6月に法務省へ提出しました。 要望書では「戦後の法改正から取り残された結果、今なお戦前の規定がほぼ踏襲され、審理手続を具体的に定めた規定はないに等しい状態。過去の再審事件において証拠開示が不十分で、著しく遅かった」などと指摘。議員立法という選択肢も視野に、今後の議論を深めていくとしています。 ■袴田ひで子さん「法改正急いで」 今回の再審開始決定を受け、袴田巌さんの姉・ひで子さんは「再審が開始されることになって大変喜んでいます。前川さんとはお互いに集会などで励ましあってきました。法律の改正を急いでやっていただきたく思っております」と話しています。
テレビ朝日