VS文春訴訟の代理人「非常に優れた弁護士」だが「100%負ける」… それでも松本人志氏が勝算なき戦いを “ヤメ検” に託したワケ
「民事事件」をヤメ検に依頼するメリット
一方、ヤメ検弁護士は刑事事件に特化していたために、民事事件には弱いのではないかという意見もあるが、日笠弁護士はそれらの声には懐疑的だ。 「民事裁判の手続きや相場をあまり知らないという意味では、確かにそういう部分があるかもしれません。ただ、裁判は『証拠を集めて、見て、その証拠から自分たちが立証したいことを組み立てていく』ことが基本で、そこは刑事事件も民事事件も変わりがありません」 その上で、松本氏が田代弁護士を選んだ理由についてはこう推測する。 「『不同意性交があったのか、なかったのか』という事実認定を求める裁判は、極めて刑事色の強い民事事件です。だから、松本氏は刑事に強い弁護士を探し、田代氏に依頼したのかもしれません」
「100%負ける」それでも松本氏が提訴を選んだワケ
田代弁護士の能力は疑いがなさそうだ。ただし、対文春裁判においては、「松本氏は100%負ける」と日笠弁護士は言い切る。 「民主主義国家、特に日本やアメリカ、西欧において『表現の自由』や『言論の自由』は、極めて重く受け止められています。よっぽどのこと、たとえばウソだとわかっていて報道したり、取材せずに記事を書いたということがない限り、報道側が負けるのはありえないこと。負けてしまうと、何も報道できなくなりますから。松本氏も、裁判上の勝ち負けで言えば、最終的には敗訴するでしょう。当然、田代氏も松本氏にそう説明しているはずで、松本氏もわかった上で裁判を起こしていると思います」 負けが確定していてなぜ、5億円という巨額の損害賠償を求め、提訴に至ったのか。日笠弁護士はそこから見え隠れする松本氏の「思い」を推察する。 「松本氏は、もう事実上引退しているつもりだと思います。もし復帰したいと思って裁判をやっているなら、あまりにも勝算がない。芸能界には復帰するつもりはないけれど、このまま不名誉なレッテルだけ貼られて、晩節を汚して去っていくのは耐えられない。名誉を挽回してから引退したいということだろうと思うんです。 『不同意性交の事実があった』と認定されてしまえば訴訟のリスクが顕在化する“もろ刃の刃”ではありますが、『不同意性交の事実がなかった』、あるいは『同意があったかもしれない(疑いがある)』と客観的に認定されれば、敗訴だったとしても、松本氏にとって勝ったに等しいことです。5億円が欲しくて提訴しているわけではなく、ただその認定を求めているのでしょう。 田代氏のフィー(弁護士費用)はわかりませんが、5億円の訴訟物(請求)だから、松本氏は何千万円のフィーを払って訴訟をやる。私にはそれだけの価値がある訴訟とは到底思えないけど、優れた弁護士である田代氏をつけて一矢報いたい。そういう松本氏なりの意地があると見ています」 3年はかかるとも言われてる一連の裁判は、果たしてどのような結末を見せるのだろうか。
弁護士JP編集部