【惜別】末期がんの叶井俊太郎が一番自慢できる仕事は『アメリ』でも『ムカデ人間』でもなく、あの映画を公開したこと
叶井俊太郎という男#2
漫画家・倉田真由美氏(52歳)の夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎氏(享年56歳)が今月16日に死去した。2022年6月にステージ3の膵臓がんと診断を受け、医師から「余命半年」の宣告を受けた。「がん」公表後も変わらず、精力的に映画製作に携わり続ける生粋の仕事人だった叶井氏。哀悼の意を表して集英社オンラインでのインタビューをお届けする。末期がんで余命半年を宣告された名物映画宣伝プロデューサー・叶井俊太郎氏。残された少ない時間を治療に充てるのではなく、仕事に捧げることに決めた叶井氏に現在の心境を聞いた。(前後編の後編) 【画像】映画『食人族』のワンシーン ©F.D.Cinematografica S.r.l.1980
やっぱり娘の成長は見届けたかった?
――書籍『エンドロール!』には入れられなかったけど、実は会いたかった人とかはいますか? 大体網羅したと思いますよ。著名で付き合いがあった人となると、このぐらいじゃないですかね。本当はモデルとかそういうのもいたんだけど、違う意味で出しちゃいけない人たちじゃないですか(笑)。 ――墓場まで持っていく話もたくさんありそうですね。 だから、死んでからみんなが騒ぐのはOKよ。ジャニーさんみたいにね。 ――あの人、なんでお葬式きてるんだろうみたいな。 そうそう。「叶井、あの人ともやってたんだ!」みたいなのがゾロゾロ出てきたら面白いよね(笑)。 ――やっぱり病気になっても、人生観は変わらないものですか? そうだね。もともと人生観なんてないし、この世に対する未練ももうないわけですよ。何かの仕事に置き換えて考えてみても、ジャンルが違うだけで、結局やることは一緒じゃないすか。だから、もうやりきってるんですよね。 ――でも、ひとつだけ、やっぱり娘さんの成長は見届けたかったんじゃないかなと思って。 それも特にないよ。もう彼氏もつくってるし、部活も忙しいし、友達と毎日遊んでるし、家に閉じこもってゲームするようなタイプじゃないから、そこはよかったんじゃないかな。 一応、「もう死んじゃうんだ」って病気のことは伝えたけど、「まあ、なるようにしかならないっしょ」って言ってて。俺と同じ考え方だったから、逆に救われるよね。思春期だからあえてそういう風にしてるのかもしれないけど、全然悲しんでない。昨日の夜も11時ぐらいまで彼氏と話してたよ。 ――ただ、叶井さん自身は娘さんができてから、すごく変わったように思います。 そう? まあ小さいときはよく遊んでたしね。最近はもう全然で、昨日もハロウィン用にドンキでセクシー警官のコスチューム買うからって1万円とられて、友達とディズニーランド行きたいからって2万円とられて。 「俺、末期がんなんだけど」って言ったけど、「関係ないっしょ」みたいな。 まあ、「お父さん死なないで~」って感じじゃないから、俺も安心できるわけよ。いい子に育ったなって思うね。っていうかさ、そんな中2いるのかね? 周りの友達もだけど、そんなに金かけるのにびっくりしちゃうよね。