【惜別】末期がんの叶井俊太郎が一番自慢できる仕事は『アメリ』でも『ムカデ人間』でもなく、あの映画を公開したこと
いままでで一番自慢できる仕事は…
ーーちなみに、いままでやってきたお仕事で、一番自慢できることは何ですか? 自慢することなんてないけど、今年に劇場公開した『食人族4Kリマスター無修正完全版』くらいかな(笑)。『アメリ』を買い付けてヒットに導いた男とか言われてるけど、実は日本語字幕が入ったものは見てないんだよ。だから死ぬ前に見たかったなって気持ちはある。 ――見る気なさそうですね。 ないね(笑)。あ、「死ぬ前にアメリが見たかった、アメリ買い付け異色バイヤーの暴露」ってタイトルどう? 面白くない? ――小見出しくらいですね。最後に、この『エンドロール!』をどう楽しんでもらいたいですか? 90年代サブカル、エンタメ業界の信じられないような話が満載じゃないですか。 宇川(直宏)くんとやったチャボやヤギを呼んできたパーティとか、DJ沢田亜矢子とかDJアジャ・コングとか、絶対ありえねだろうっていうことが、東京で日々ひっそりと繰り広げられてたわけですよ。そういう知られざる90年代サブカルの裏側を知ってもらえると思います。 ――やっぱり、あの時代は叶井さんにとっても青春でしたか。 そうですね。Kダブと過ごした昭和の渋谷だって異常ですよ。塾帰りにディスコへ行って、朝まで遊んでからまた学校に行くなんて、そんな中学生いるわけないでしょ。でも、いたんですから。 ――娘さんのこと何にも叱れないですよね。 叱れない(笑)。そういった異常な世界が臨場感たっぷりに伝わってくると思うので、面白いと思います。それと、映画関係者にもたくさん出ていただいているので、清水崇と呪怨の裏側だったり、ヒット映画に隠された裏の世界も知れるんじゃないかと思います。 ――そして最後のあとがきを、くらたまさんがしっかりと締めてくれています。 読んだ人はみんな素晴らしいって言うよね。俺としては、真面目に書いててるから笑えないなあと思うんだけど、心配してくれているんだなって感じました。 取材・文/森野広明 撮影/井上たろう 本記事は2月16日に逝去した叶井俊太郎氏(享年56)の仕事を偲んで再編集・再掲載する。(初公開日:2023年10月31日。記事は公開日の状況。ご注意ください)