きゃりーぱみゅぱみゅ「私は“人生=ぼっち”」コロナ禍で向き合った一人時間
一番落ち込んだ「紅白歌合戦の落選」
――10年活動する中でつらい時期もあったのではないでしょうか? きゃりーぱみゅぱみゅ: ありましたね。一番落ち込んだのは、2015年の年末、それまで3年連続で出場していた紅白歌合戦に落選してしまったときです。そのときは、自分が落ち込んだというよりも、紅白出場を楽しみにしてくれていたメイクさんやスタイリストさん、ダンサーさんたちなど、私のチームのスタッフのみんなに申し訳ない気持ちになってしまって。申し訳ないとみんなに伝えるのも違うし、この気持ちを誰かに相談することもできなくて、このチームのリーダーとしてすごく苦しかった時期でしたね。 ――普段、きゃりーぱみゅぱみゅという一つのチームのリーダーとして、悩みを抱えたときはどう対処しているのですか? きゃりーぱみゅぱみゅ: 私は、悩みを聞いてほしいタイプじゃなくて、悩みを解決したいタイプなんです。「その気持ち分かるよ」と同調してもらったり、「きゃりーちゃん、一人でやってて偉いね」って言ってほしかったりするわけではなくて、具体的にどうしたらこの状況を切り抜けられるのかを考えたい。なので、あまり人に相談しなくなりましたね(笑)。 あと、マドンナさんのスピーチ内容がまとまったウェブサイトのページをずっとブックマークしていて、落ち込んだときに見返すこともあります。マドンナさんが、昔から受けてきた女性差別やいやがらせに対してどう闘ってきたかがまとめられているページです。私も女性として一人でステージに立つアーティストとして、彼女の言葉から学ぶことも多いですね。
日常の中の小さな幸せを大切に育てていく
――29歳を目前に控え、いま抱いている思いはありますか? きゃりーぱみゅぱみゅ: 日本は、やっぱり「若くてかわいい」ことを評価されるじゃないですか。アイドルは特にその傾向ですし、アイドルではない私でも20代後半にもなると、「おばさん」や「オワコン」と言われることがある。一方で、例えばフランスの女優さんだと、むしろ歳を重ねることが美しさとして評価されていたりするんです。私も、年齢を重ねたからこその美しさを表現できればなと思いますね。 ――「丁寧な暮らしを心がけている」とお聞きしました。 きゃりーぱみゅぱみゅ: はじめて観葉植物を買ったことがきっかけかもしれないですね。もともと興味はあったんですけど、ツアーで家を数週間空けてしまうことが珍しくなかったのでお世話できないなと思っていたんです。そこで、自粛期間を機に思い切って観葉植物を買ってみたんです。当たり前かもしれないですけど、植物って水を与えれば成長するし、与えなかったら枯れてしまう。その素直な姿に心を打たれてしまって……どんどん増えて、いまではおうちに観葉植物が17個あります(笑)。 コロナ禍になって友だちとなかなか会えないし、日常の中の小さな幸せを見つけづらかった。忙しいときはイライラしてしまって、それがストレスになっていたんです。ただ、今は朝起きて観葉植物に霧吹きをして、新芽が出ているのを見つけたり、次の日に花が咲いているのを愛でたり……そういう暮らしが楽しいなと思うようになりました。 植物と向き合うときは、すごく心が満たされているんです。たぶん、私が水やりをしている姿を植物視点で見ると、めちゃくちゃ優しい顔していると思うんですよ。今の私は、植物のお世話をすることで、心がすごく落ち着いて、優しい気持ちでいっぱいになっている気がします。 ----- きゃりーぱみゅぱみゅ 東京都出身。アーティスト。高校を卒業した2011年夏に、中田ヤスタカプロデュースによるミニアルバム「もしもし原宿」でメジャーデビュー。2013年には、初めてのワールドツアーを成功させる。2021年、新レーベル「KRK LAB」を立ち上げ、自身のデビュー10周年記念日である8月17日に新曲「原点回避」をデジタルリリース。10月27日にはフルアルバム「キャンディーレーサー」をリリース予定。 文:早川大輝 制作協力:Viibar