70代の著者が教える“老い”を豊かに楽しむ考え方【初めての“老い”を上手に生きる】
老人と幸せ
ほとんどの人が、ほどよく幸せに老後を暮らしたいと思う。 老人の幸せとは、何か。 人それぞれにその幸せ観は違うようです。 ただ、老化するということは、行動範囲が狭まり、社会生活への関心が薄れること。 だから、欲を出さず、ほどよく幸せに暮らせばいいのです。 生ある限り、幸せに生き続けるためには、肉体的にそこそこ健康であることです。 もちろん、手術を伴わない軽い病気なら、適当に薬を飲んで、医者の言うことを守り、病気と仲良くすればいい。 身体の衰えに反して、大事なのは、心が豊かであること。 それに、少しは社会の変化に関心を持ち、孤立しない程度に、今の環境に適応できれば十分。 老化現象と仲良くしながら、時々は心が青春時代に戻るのも楽しい。 一億総アンチエイジングに過剰に反応することなく、寿命は運命と受け入れ、淡々とわが道を全うしていく。 高齢者は、ややもすると、残り少ない時間、去り行く人々や身内のつれなさを嘆き悲しみ、“何のために生きているのか”と愚痴りたくなることがある。 沖縄に、100歳に近い老人が、畑仕事をしながら自立し、親切なまわりの人々に囲まれ一見、幸せそうに暮らしている村があるそうです。 都会の孤立した寂しい高齢者から見ると、“まるで楽園”のようでうらやましいような幸せで充実した暮らし。 ところが。 そこに住む老人に聞き取りをすると、“長生きしたいわけではない” “何のために生きているのか”と話すという。 なるほど、どんな環境に暮らしても、老人の憂いや不安は共通するようです。 いつまでも、幸せに浸りたいと願うのは、おとぎ話の世界。 “幸せの青い鳥”は、求めるものではなく、自分自身の心の中に見つけ育てるもの。 人間は何歳になっても、どんな環境でも、満ち足りることなく、良くも悪しくも“考える葦(あし)”なのです。 初めての“老い”を上手に生きる 著/沖幸子 笠間書院 1,760円(税込) 沖 幸子(おき・さちこ) 兵庫県生まれ。生活経済評論家。家事サポートサービス「フラオ グルッペ」代表。大学客員教授(起業論)や経済産業省、厚生労働省などの政府審議会委員も務める。 神戸大学卒業後、ANA、洗剤メーカーを経て、ドイツ、イギリス、オランダで生活マーケティングを学び、グローバルな視点を持つ暮らしのデザイナー・女性起業家として、メディアで活躍。「掃除界のカリスマ」として知られ、家 事や暮らしが楽しくなる数々のエッセイや評論を執筆している。 著書は、『ドイツ流 掃除の賢人』(光文社)、『50 過ぎたら、ものは引き算、心は足し算』(祥伝社)、『60 からは 喜びはかけ算 悲しみは割り算』(世界文化社)、『70 過ぎたら あるがまま、上手に暮らす』(祥伝社)など多数。
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