私大医学部の学費は平均約3200万円 費用を抑える手はある…?
子どもから「医学部を目指したい」と言われたとき、頭をよぎるのは学費のことかもしれません。国公立大学と違って、私立大学の医学部は学費が高いことで知られています。実際いくらくらいかかるのでしょうか。また、学費を抑える方法はあるのでしょうか。学費の安い私立大医学部と高い大学の上位10校のランキングを紹介します。 【写真】昔のイメージとは大違い? 女子高生に人気の意外な大学
医系専門予備校メディカルラボがまとめた全国31校の「私立大学医学部学納金ランキング(6年間総額)」(2023年9月初旬時点)によると、学費が安い私立大学医学部は写真の10校です。 最も安いのが、国際医療福祉大学の1850万円です。2位は順天堂大学の2080万円、3位は関西医科大学の2144万円で、以下、上位10校まで2000万円台になっています。
次に、学費が高い私立大学の上位10校を見てみましょう。 最も高いのが、川崎医科大学で4740万円です。次いで東京女子医科大学、金沢医科大学も4000万円台となっています。医学部のある31校の私立大学のうち、約3分の2(31大学中20大学)が3000万円以上となっており、私立大学医学部の学費が高いことがわかります。31校の平均は約3200万円です。 なお、国立大学は学部にかかわらず、学費の標準額は授業料が年間53万5800円、入学金が28万2000円と決められており、医学部の6年間の学費は349万6800円となり、公立大学もこれに準じています(一部大学を除く)。 メディカルラボ情報研究所の山本雄三所長は、「私立大学の医学部は昔、多くの大学が運営費用の一部を寄付金でまかなっていた歴史があります。このことが学費の高さにつながっていると考えられます」と言い、その歴史を次のように解説します。 私立大学医学部が続々と新設されるようになったのは、1961年に国民皆保険がスタートしたことがきっかけです。医療機関を受診する人が急激に増え、医師不足が大きな社会問題となり、医学部を設立しようという機運が高まりました。 その際、国は財政支出の増大を避けるため、国公立大学よりも私立大学を増やす政策を取り、1970年以降に私立大学医学部が続々と開設されました。医学部をつくる際には、付属病院や研究施設が必要で莫大な資金を要するため、寄付金が非常に大事な要素になりました。 しかし、入学者の選考に寄付金がからんでいるのではないかという「裏口入学」の疑惑が問題になったことから、文部省(当時)は1977年、入学を条件とした寄付金を一切取らないように要請する通達を出しました。その結果、翌年から授業料のほか実験実習費、施設充実費などを含めた年間の学費が多くの私立大学で約4倍に上昇しました。 一方、大学による学費の差は当時からありました。メディカルラボの資料によれば、1981年度の初年度納付金(入学金を含む)は最も安い慶應義塾大学の161万円から、最も高い金沢医科大学の1530万円まで10倍近い差がありました。「慶應義塾大学の医学部は、昔から学費が安いことで知られていました」と山本所長は言います。 2024年度用のランキングでは、慶應義塾大学の初年度納付金は387万3350円(2023年度)で、当時に比べれば倍以上に上がっているものの、私立大学31校(同)4番目に安くなっています。最も高いのは、川崎医科大学の1225万円です。その差は大きく変わっていないといえるでしょう。