インタビュー(3)日本サッカー協会・宮本恒靖会長が明かす会長選と理事会、ライフワークと8年後「日本でサッカーを大きな存在にしたい」
■理事の人数をスリム化「28人から15人」に
――会長になる前の2年間で、どのようなことに取り組んできたのでしょうか。 「JFAに入った当初、縦割りの仕事が多く、横の連携が取れていないという印象を持ちました。コロナ禍の真っ最中で難しい面はあったと思いますが、もっとフレキシブル(柔軟で臨機応変)に、お互いの課題を共有しながら対処するチャンネルをたくさん持ちながら、目標に向かって進んでいこうと職員に伝えました。会長に就いてからは、JFAの目標というのは、2005年宣言の理念(サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する)の実現と、強い日本代表チームを持ち続けること。ここに到達することから逆算して何をするかを考えてほしいと話しています」 ――昨年JFAは移転しましたが、新しいオフィスを訪れると、皆さんすごく前向きに取り組んでいるように感じます。 「こちら側から見ていると、徐々に変わってきているのかなと思います。職員にいろいろと意見を出してもらうのですが、課題として出てきたものを改善するにはどうしたらいいか。長い経験を持つ職員もいますので、一緒になって考える。その積み重ねですね」 ――今期の理事会は、ずいぶん人数が減りましたね。2022/2023年期の理事28人に対し、今期は15人となっています。 「理事の数をスリムにするという考え方は、前体制での決定事項です。理事会ではサッカー界をより良くしていくための議論ができればと思いますし、事務局にはしっかりとしたタレント(才能、技量がある人)がいて、サッカーのことを考え、良くしていこうという思いで仕事に取り組んでいてくれます。その人たちの力をしっかり生かせるような組織になっていくべきだと考えています」
■最長4期つとめた後の「将来像」と「変わらぬ軸」
――職員も意欲が増しているのではないかと思います。 「今のやり方がベストというのではなく、もっとこうしたほうがいいということには柔軟に進んでいける組織でありたい。サッカーも、試合前に4-4-2で行こうとスタートしても、試合が始まったら、“これは3トップ気味でプレッシングしたほうがいいよね”と、選手自身が微調整するときもある。風向きが変わったら、違うサッカーにしなければならない。プレーヤー自身も考えて行動する。そこには一定の責任も伴う。そのほうがやりがいも感じるし、自分の仕事、パフォーマンスに対する自己反省にもつながる」 ――現在47歳。JFAの会長職は、規則で最長4期、8年までと決められています。8年後はまだ55歳です。その後の「将来像」というのは頭にあるのでしょうか。 「大前提として、僕がそれだけ長期間できるのかわかりません。そして、今の質問に対する答えは、“終わってみなければわからない”ということです」 ――FIFAマスター(FIFAが運営するスポーツ学に関する大学院の修士課程)の修了者として、世界中に知り合い、仲間が多いと思います。 「たしかに知り合いはたくさんいますが、前会長の田嶋さんも世界中に仲間を持ち、日本のサッカーが孤立しないように多大な努力をされてきました。今まであったそのつながりを大事にし、そこに自分のつながりを生かして活動していきたいと思っています」 ――会長職を離れたら? 「どんな立場になっても、“日本でサッカーを大きな存在にしたい”という、その軸は変わらないと思います」 ――ライフワークというわけですね。 「そうですね。ライフワークです」
大住良之
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