遠足の“おやつ交換禁止”に賛否の声「小5女児が給食で粉チーズ入りのチヂミを食べて死亡事故」も…学校で広がる子どものアレルギー対策
調布の小学女児、死亡事故がきっかけに
近年は、アレルギー問題に力を注ぐ学校が目立ち、それに伴って遠足のお菓子交換自体を禁止する学校が増えている。 東京都のとある自治体の教育委員会が発行した「食物アレルギー対応方針」にも「遠足や社会科見学等では、児童・生徒が持参した弁当や菓子の交換などをしないよう、学級担任等が指導する」と明記されていた。 かつては遠足のワンシーンとして許容されたお菓子交換が、なぜ令和の今ここまで厳しくなったのか。都内の自治体の給食センターで働く担当者に話を聞いた。 「2012年12月に東京都調布市の小学校で、食物アレルギーを持つ小学5年生の女児が、給食で乳製品の粉チーズが入ったチヂミを食べたことで亡くなったんです。この事故がきっかけで、調布市では『調布モデル』と呼ばれる食物アレルギーへの対応マニュアルが作成されたんですが、これを機に文科省も動き始め、全国的に児童のアレルギー対策への意識が一気に高まりました」(給食センター職員、以下同) 女児が引き起こしたのは、急性アレルギー反応の一つとして知られる「アナフィラキシーショック」。アレルゲンが体内に侵入することで、複数の臓器にアレルギー症状が急速に現れ、血圧低下や意識障害を引き起こす。一刻も早く医療機関で治療しないと死に至る危険性があるものだという。
北海道の蕎麦アレルギー事故も、広がるアレルギー対策
調布市での事故以前は、学校現場ではどのようなアレルギー対策が取られていたのか。 「平成初期からアレルギー対策は始まっていたんですが、自治体で統一した対応ができていなかったんです。各学校に栄養士が1人配置されていましたが、その栄養士の力量や情報量の差から、アレルギー対策を一切していなかったり、逆に過剰にしすぎていたり、学校によって給食のアレルギー対策がまばらな上、あまり問題が表面化することはなかったんです」 調布の事故の前にも、北海道で蕎麦アレルギーを持った小学男児が、誤って学校給食の蕎麦を食べてしまったことから、下校中に窒息して亡くなるという痛ましい事故が起こっている。 「当時からアレルギーの子どものために、別メニューを作ったり、除去すべき食材を除くなどの配慮をしている学校給食もありましたが、あくまで保護者と教員間の個々のやり取りで、具体的な方法が決められているわけではありませんでした。 昭和50~60年代ってアレルギーに関するエビデンスもしっかりしていなくて、アトピー性皮膚炎で一つにまとめられていたりもしていました。その後、だんだんとアレルギーの原理が判明してきて、食物アレルギーに対しても解明が進んでいき、診断も細かくなっていきました。 その中で調布の事故があって、文科省が全国に呼び掛けて自治体が統一的な規定を作るなど一気に変わっていきました。医師が生活隔離指導表を書くことによって、特定の食物を除去した除去食という考え方もできて、給食だけではなく、学校生活全般の中でアレルギーの対策が広がっていきました。遠足のお菓子交換の禁止もその一部なんだと思います」 遠足のおやつ交換が禁止された背景には、痛ましい事故を再び繰り返さないという学校側の配慮が隠されていたのだった。 取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部
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