鯨肉需要 北海道内で掘り起こし ナガスクジラ水揚げ 捕獲海域近く 生肉が強み
商業捕鯨母船「関鯨(かんげい)丸」が11日、石狩湾新港に初入港し、ナガスクジラが約半世紀ぶりに道内港で水揚げされた。運航を担う共同船舶(東京)は、全国でも消費量が少ない北海道内での鯨肉の需要喚起を狙い、道都・札幌を市場開拓で重視。ナガスの生肉は、12日以降に一部の飲食店やスーパーが扱う見通しだ。ただ、食文化の移り変わりもあり、鯨肉の供給と消費を増やすのは容易ではない。商業捕鯨の再開から5年。産業として成長する道筋を見いだせるのかも課題となっている。 【グラフ】全国のクジラ生産量と札幌市中央卸売市場の取扱量、取引価格
「マグロの中トロと牛肉を足して割ったような味わいです」。共同船舶の所英樹社長は、船内で鮮やかな赤身ときめ細かい脂のさしが入ったナガスクジラの尾の身を報道陣に見せて説明した。 同社は2019年に再開した商業捕鯨の国内生産量の約9割を占める最大手。捕鯨には、母船と小型船が船団を組んで操業する母船式とは別に、日帰りの基地式がある。日本以外の商業捕鯨国はノルウェーなど4カ国で、母船式を手がけるのは同社だけ。今年3月に73年ぶりに捕鯨母船を新造したのも「母船式が途絶える」(所社長)との危機感があったためだ。 約75億円の建造費は同社が賄ったため、投資回収のためにも、商業捕鯨の採算性を高める必要がある。ただ、捕獲枠は水産庁が設定している。同社の鯨肉生産量は多くて年間1600トン余りだ。 鯨肉の国内消費量は、1960年代は年間約20万トンに上り、牛肉や鶏肉を上回っていた。現在は2200トン程度で、調査捕鯨時代の10年ほど前の5千トンの半分以下。輸入物との競合もあり、鯨肉の在庫は積み上がりやすい。所社長は「まずは10年前の消費量に戻すことが必要」と話す。