NEXT特捜隊　静岡県内の路線バスの乗り方って「特殊」なの？

　コロナ禍が落ち着き、静岡県内にも行楽客が戻りつつある中、読者の疑問に答える静岡新聞社「NEXT特捜隊」に路線バスの運行に関する声が寄せられた。「県外からの観光客らしき人がバスの乗車時、整理券を取り運賃に応じて後払いすることを知らず、戸惑っているのを見かけた。静岡県内のバスの乗り方は他の地域と比べて特殊なの？」（県東部の40代女性）。そう言われると、運賃を先に支払う路線バスを見たことがあるような気もする―。県内外での乗り方の違いやその理由などについて調べた。

距離によって料金変動　「対キロ運賃」が一般的

座席背面、乗車口などの掲示物で釣り銭が出ることを周知している

　県バス協会（静岡市葵区）によると、路線バスの料金形態には大別すると2種類ある。乗車距離によって料金が変動する「対キロ運賃」と、料金が一定の「均一運賃」で、対キロ運賃が使われることが多いという。 　対キロ運賃の場合は乗車時に整理券を取り、運賃表の番号と照らし合わせて降車時に支払う「後払い制」が一般的。国土交通省中部運輸局のホームページに記載されている、県内に本社を置く路線バス事業者は9社。全社に話を聞くと、一部のコミュニティーバスを除き全ての直営路線で後払い制を取っていた。 　一方、均一運賃の場合、降車場所によって運賃が変わらないため「先払い制」を導入する場合もある。停留所での滞在時間を短くできる利点もあり、利用者が多く、渋滞が発生しやすい東京都内など、主に都市区間の一部で採用されている。 　県内の一部事業者によると、均一運賃を採用する関東方面の利用者からは「乗り方、支払い方が分かりにくい」という意見もあるという。車内のアナウンスや掲示物を使って乗り降りの方法を案内する事業者が多く、中にはバスの乗り方教室や啓発グッズの配布で周知を図る例もあった。 　同協会の堀内哲郎専務理事は「知らない場所でバスに乗る時は、少し戸惑うこともあるかもしれない。ホームページやバス停で乗り方案内を調べてほしい」と呼びかけた。

釣り銭の出る運賃箱　県内では2社が導入

秋葉バスサービスで導入されている釣り銭が出る運賃箱＝森町

　質問には「運賃箱からお釣りが出ないことも、支払い時の混乱を招いていた」とも記されていた。 　日本バス協会（東京都）によると、釣り銭が出る運賃箱は全国的には10年以上前から、徐々に導入が進んでいるという。県内9社の中では、しずてつジャストライン（静岡市葵区）の一部路線と秋葉バスサービス（森町）で採用している。 　しずてつジャストラインは7月末から新たな運賃箱の導入を始めた。同社によると、2027年度までに全車両で釣り銭が出る運賃箱への載せ替えを完了する予定だという。 　秋葉バスサービスは20年8月、老朽化した運賃箱を交換する際に変更したという。鵜藤圭三支配人兼運行課長によると、土地柄からバス利用者の高齢化率が高く、現金で支払う人も多い。変更後は高齢者が両替のために、車内で席を立って転倒しかけるなどの「ヒヤリハット」事例が減ったそうだ。