西島秀俊やニコール・キッドマンが出演！ お盆におすすめの最新ドラマ4選
Prime Videoで配信されているニコール・キッドマン主演のドラマやNetflix、ディズニープラス配信の人気シリーズの最新作、西島秀俊が英語で挑んだA24製作のドラマなどをピックアップ。猛暑のお盆、自宅でドラマ三昧はいかがだろうか。 【写真を見る】お盆におすすめの最新ドラマ4選をチェックする
──『エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~』── ■香港を舞台にしたアメリカ人の物語 原作はジャニス・Y・K・リーによる世界的ベストセラー小説「Expatriates」で、ニコール・キッドマンが主演、監督を映画『フェアウェル』などで知られるルル・ワンが務めた。 エクスパッツ（Expats）とは、Expatriateの略。母国を離れて他国に長期間に渡って住む人のことで、国外在住者や海外駐在員のことを指す言葉だ。本作は、香港に住む3人のアメリカ人女性たちが、家族に起きた突然の悲劇をきっかけに人生を交差させていく。 ニコール・キッドマン演じるマーガレットは、駐在員である夫の仕事の関係で香港に移住。家政婦のいる高級マンションで何不自由ない生活を送っていたが、仕事ができないことに不満をもっていた。ヒラリーは、マーガレットと同じマンションに夫とふたりで暮らしている。そろそろ子どもをもちたい夫と、また心の準備ができず、それを夫に隠している自分に後ろめたい気持ちをもっていた。マーシーはコロンビア大学を卒業するも、母親とうまくいかず、ひとり香港へ逃亡。ひたすらバイトに明け暮れるフリーターだ。生粋のアメリカ人のマーガレットと、インド系のヒラリー、韓国系のマーシーという異なるルーツをもつ3人の女性が香港という文化が混ざり合う街で出会う。 ■幸せなのは誰か マーガレットは典型的な富裕層のアメリカ人として描かれる。中国語を一切話さず、街の人とコミュニケーションを取る際も一方的に英語でまくしたてては、「全然話が通じないわ、まったくもう」といったようにまるで自分が被害者かのような顔をする。彼女の辞書には、郷に入っては郷に従えという言葉など存在しないのだ。さすがに今どき、ここまでステレオタイプなアメリカ人は少ないと信じたいが、ニコール・キッドマンがハマり役で、こういう人いそう！とその生々しさがリアルに伝わってくる。 ある事件をきっかけにマーガレットたち3人は、被害者であり加害者になっていく。ここで描かれるのも『一流シェフのファミリーレストラン』同様、変化する人間関係だ。誰かにとっては被害者だし、別の立場からは加害者になる。組織やコミュニティ毎にインタラクティブに変化する人間関係は、特に多様な文化が混ざり合う香港では、入り組む路地のように複雑さを極めていく。 また、駐在員の家政婦にもドラマがある。フィリピンから出稼ぎに来ている彼女たちもまたエクスパッツなのだ。薄給をやりくりし母国に仕送りをし、我慢を強いられる毎日を送っているが、富裕層の女性たちと圧倒的に違うのは、コミュニティの力の存在だ。彼女たちはお互いに支え合い、情報交換をし、エンパワーしながら日々を闘っている。孤独な富裕層の女性との対比は本作を立体的に見せる見事な演出だ。どの立場の女性たちも皆一様に幸せそうに見えず、一体幸せとは何なのか、を考えさせられる。 ■香港の魅力を引き出したヴィヴィッドな映像美 また本作の見どころは、何と言っても香港の街並みだ。マーガレットとヒラリーが住む高級コンドミニアムに高級ホテル、混沌とした夜市や、九龍の古アパートなど、観光ドラマとしても見事。コントラスト高めで、湿度を感じる映像が、ただでさえドラマチックな香港の街をさらに鮮やかに魅せる。アジアを舞台にしたドラマが増えるなか、ここまで街のエネルギーを感じられる作品は稀有。まるで旅に出たかのように異国を味わえ、6話という少なめのエピソード数も魅力的。週末一気見ドラマに最適だ。 『エクスパッツ ~異国でのリアルな日常~』 Prime Video で独占配信中 ──『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン3── ■エミー賞総なめの人気シリーズ エミー賞総なめの人気シリーズ ディズニープラスでシーズン3まで配信されている『一流シェフのファミリーレストラン』。昨年の「75回プライムタイム・エミー賞（コメディ部門）」では、シーズン1が作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など主要部門賞を総なめし、去る7月にノミネートが発表された「第76回プライムタイム・エミー賞（コメディ部門）」では、シーズン2が23ノミネートという快挙を果たした（ちなみにドラマ部門の『SHOGUN 将軍』は25ノミネート）。待望のシーズン3は、日本では7月17日に配信が開始された。 ファンの間では邦題の『一流シェフのファミリーレストラン』よりも、原題の『ザ・ベアー』と呼ばれることが多い本作。主演のカーミーをカルバン・クラインのアンバサダーも務め、一躍ファッションアイコンとなったジェレミー・アレン・ホワイトが演じ、スーシェフのシドニー役をアイオウ・エディバリー、兄の親友リッチー役をエボン・モス＝バクラックが務めた。 ■地元民に愛されるサンドイッチ店から一流レストランへ シーズン1は、ニューヨークの有名レストランで活躍していたカーミーが、兄の死をきっかけに地元シカゴに戻り、兄の遺した借金まみれのサンドイッチ店「ザ・ビーフ」を引き継ぐところから始まる。カーミーは、兄の元で働いていたクセの強いスタッフたちとぶつかりながらも、店をなんとか再建しようと奮闘する。 シーズン2では、地元のサンドイッチ店からレストランへとリニューアルしていく過程を描く。一流レストランを目指すスタッフたちは、料理の腕を磨いたり、サービスを学んだりと、それぞれが努力を重ねていく。相変わらず罵声が飛び交う厨房だが、少しずつ彼らの絆が深まり、チームとしても成長していく過程が描かれる。そしてプレオープンを迎えるが、カオスと化した厨房はハプニングの連続。思いもよらぬ事態が起こり、カーミーは絶望の淵にたたされる。 ■ついにオープンしたレストランだったが シーズン3では、ついにレストラン「ザ・ベアー」が開業する。カーミーの目標は、星を獲得すること。そのために私生活を犠牲にし、スタッフたちにも過剰な要求を突きつける。「メニューは毎日変える」、「絶対服従」などの厳しいルールと、コストのかかりすぎるメニューゆえ、売上もままならず、スタッフたちとの溝は広がっていく。さらに、カーミーが尊敬してきたシェフ、テリーが料理の世界から引退することを発表し、星を獲ることに盲信していたカーミーの心に隙間が生じる。 本作はエミー賞では、コメディ部門への出品となっているが、コメディ要素はまったくない。特にシーズン3は、心が休まる瞬間がないほどヒリヒリしたシーンが繰り返され、ストレスフルな展開だ。常に人が動き回り怒号が飛び交い、一瞬たりとも目が離せない。エピソード1は、まるでドキュメンタリー作品かアート映画かというスタイルで、セリフはほぼなく、もしシーズン3から初めて本作を観るとしたら斬新な展開に驚くだろう。それでも本作が人々を魅了して止まないのは、そこに描かれるのが、毎日をなんとか生き抜いていく不器用な人間たちそのものの姿だから。尊敬されるスターシェフも、従業員からしたら嫌な上司だし、いつも優しいお母さんも、社会に出たらぞんざいに扱われる掃除のおばさんだったりする。調理の仕方で自在に味を変える食材のように、人も関係性によって見え方が変わる。 ■キーワードは”シェフ”！ レストランで最高の料理を出すことに文字通り命をかけるカーミーと、それを支えようと奮闘するスタッフたち。彼らは、どんな立場にある人間であっても必ず全員のことを敬意を込めて”シェフ”と呼ぶ。舞台はキッチンだが本作で描かれるのは人間関係だ。たとえ意見の対立があっても、相手にリスペクトをもって接することができれば、分断は避けられることを教えてくれる。また、躍動感ある映像も圧巻で、手元のみが映る料理シーンもスタントを使わず、俳優本人が演じているという。さらに、シーズン3には、ニューヨークのミシュラン二つ星フレンチ「ダニエル」のシェフ、ダニエル・ブリューや、デンマークの「ノーマ」のカリスマシェフ、レネ・レゼピもゲスト出演。ドラマ好きだけでなく、フーディーも楽しめる作品となっている。 『一流シェフのファミリーレストラン』 ディズニープラス「スター」で独占配信中 ──『サニー』── ■A24製作、西島秀俊出演のダークスリラー 映画『ソーシャル・ネットワーク』やApple TV＋のドラマ『サイロ』のラシダ・ジョーンズが主演、製作総指揮を務め、A24が製作したドラマ『サニー』。原作は日本在住のアイルランド人作家コリン・オサリバン著の小説「ダーク・マニュアル」。西島秀俊や、ジュディ・オング、國村隼らが出演する。 スージー（ラシダ・ジョーンズ）は、京都に住むアメリカ人女性。謎の飛行機事故で夫のマサ（西島秀俊）と息子のゼンが消息不明になってしまう。ある日お見舞いと称して、マサが勤める電子機器メーカー「イマテック」が製造したという家庭用ロボット「サニー」が自宅へ届けられる。彼女のためにプログラミングされたというサニーは、スージーを慰めようとするが、スージーは気味が悪いと毛嫌いする。ところがサニーにマサの面影を見たスージーは、以来サニーのことを信頼するように。生死もわからない夫の行方を探るスージーだが、思いも寄らない秘密を知り、怪しげな世界へと足を踏み入れていく。 ■物語を格上げするスタイリッシュな美術 Apple TV＋とA24、ラシダ・ジョーンズがコラボレーションをするのは、ソフィア・コッポラ監督作『オン・ザ・ロック』に続き2度目。『サニー』は、スタイリッシュな映像と、意外なストーリー展開、1話30分程度という短さで、さくさくと見進められてしまうドラマとなっている。特にロケーションが白眉で、スージーが暮らす日本風家屋をモダナイズした自宅や、マサが勤める「イマテック」の社屋などの建築は非常に洗練されている。ちなみにマサの会社として使われているのは、大谷幸夫設計の国立京都国際会館で京都市に実際ある建物だ。 そのほか、銭湯やアダルトグッズショップなど、日本が舞台となる作品ではお馴染みのロケーションも、”クールジャパン”といった風情ではなく、哀愁をただよわせたシックなタッチで描かれている。キャラクターメイクも秀逸で、ステレオタイプになりがちなヤクザやハッカー、ロボットなども、やり過ぎず、絶妙なバランスでストーリーと京都の街に馴染んでいる。 ■日本語と英語をシームレスに行き来する巧妙な脚本 本作は日本語と英語で展開していくが、ジュディ・オングや國村隼など芸達者な役者陣と英語も日本語も操ることができるロボットのおかげで、言語がノイズになることもない。ミクシー役のアニー・ザ・クラムジーは、シンガーソングライターとしても活躍し、新人ながら巧みなバイリンガル演技で印象を残した。『SHOGUN 将軍』のアンナ・サワイや、『TOKYO VICE』の笠松将などバイリンガル俳優の需要はますます高まっているといえる。 また『エクスパッツ』のマーガレット同様、スージーも日本語を話さないし学ぼうともしない。「外国人ゆえ文句を言われることもなく、特別扱いされるのが心地良いんじゃないの？だから友達もいないんじゃない？」とミクシーに指摘されスージーは我に返る。コロナ禍を経て、自と他の境界線が明確になった今、英語話者特有の”上から目線”に改めて世界が疑問を呈している。 孤独を求めて日本に来たスージーだが、不意に出会ったマサとは心を通わせ家族を築いた。しかし、突然その幸せは奪われ、また孤独に生きることになってしまう。そこに現れたのがロボットのサニーだ。彼女のおかげでスージーは再び声を取り戻すとともに行動力も得る。失敗をしたミクシーにサニーは腹を立てるが、「人間だからミスもする」とスージーは許す。その時サニーはなんとも悲しい顔をするのだ。我々は機械はミスをしないのが当然と思っているが、それは思い込みかもしれない。AIやロボットなどのテクノロジーなしで生きていくことは不可能な今、その関係性を改めて考えさせられる作品だ。 Apple TV＋「サニー」 Apple TV＋にて毎週水曜配信中 （最終話は9月4日配信） ──『アンブレラ・アカデミー』最終シーズン── ■時空を越えて世界を救う 「マーベル・コミック」、「DCコミックス」と並ぶアメリカの大手コミック出版社である「ダークホースコミックス」から刊行されているコミック原作のスーパーヒーロー作品。 1989年、妊娠していないはずの女性43人が突如出産するという奇妙な事件が世界で起きる。資産家のハーグリーブス卿は、こうして生まれた7人の子どもを養子にし、彼らの特殊能力を鍛えて「アンブレラ・アカデミー」を設立。ナンバー1からナンバー7と名付けられた子どもたちは、特殊能力を活かし世の中を悪事から守っていたが、ナンバー7だけは特殊能力が開花しなかった。あることをきっかけに解散していたアンブレラ・アカデミーだが、2019年のハーグリーブス卿の死をきっかけに再び集結。その際ナンバー7のヴァーニャは自身の能力が制御されていたことを知り暴走。世界を滅亡へと導いてしまうが、兄弟たちは歴史を変えるために過去へと向かう、というのがシーズン1。 シーズン2では、ヴァーニャの暴走が原因となり、第3次世界大戦が勃発。なんとか事態をおさめて2019年に戻ると、そこには「アンブレラ・アカデミー」は存在せず、代わりに「スパロー・アカデミー」があった。自分たちが存在しない世界へ誤って来てしまったことでタイムパラドックスが起き、兄弟たちはまた世界滅亡の危機に直面することになる。「スパロー・アカデミー」と対峙する兄弟たちだったが、なぜかスーパーパワーを失ってしまうというところでシーズン3は終わりを迎え、満を持して最終シーズンであるシーズン4が8月8日から配信された。 ■現代的な家族の物語 本作は特殊能力をもつものが、世界を救うというジャンルものではあるが、家族の物語でもある。厳格な父に愛情を注がれず育った兄弟たち。人種も能力も異なるが、一緒に育った兄弟という絆でかろうじてつながっており、その絆が助けになったり足かせになったりしながら、画一的ではない家族の姿を描いていく。また彼らは奇しくも世界を救うという大役を負っているが、愛を求めるひとりの人間でもある。自分の幸せより人類の平和を追求しなければならない葛藤がそこにはあり、スーパーヒーローものながら深淵な人間ドラマとしての要素もある。 そして本作の魅力は、登場人物たちも思わず踊りだしてしまうサウンドトラックだ。「I Think We’re Alone Now」（ティファニー）や「ドント・ストップ・ミー・ナウ」（クイーン）など往年の名曲が物語を効果的に盛り上げる。キャラクターメイクや衣装も洗練されており、アメコミ然としていないファッショナブルなスタイルも印象的だ。 ■ついに結末を迎える涙の最終シーズン またナンバー7であるヴァーニャ役のエリオット・ペイジは2020年にカミングアウトし、名前をエレン・ペイジからエリオット・ペイジへと変更した。それに伴い、ヴァーニャという役名もシーズン3でヴィクターへと変更されている。このようにフレキシブルに対応する制作サイドのスタンスも、本作がファンからは支持される一因となっているのは間違いない。多様な家族のあり方を元に展開する現代に即したスーパーヒーロー作品『アンブレラ・アカデミー』。ついに最終シーズンを迎えるが、愛すべき兄弟たちの行く末に期待してほしい。 Netflixシリーズ「アンブレラ・アカデミー」 シーズン1～4独占配信中 編集と文・遠藤加奈（GQ）
