縮む路線バス網、5年間で7448キロの路線が廃止 コロナ後も地方の回復は大都市圏より緩く
地域住民の移動を支える公共交通機関が細ってきている。人口減や過疎化に加えて、新型コロナウイルス下での行動制限に伴う利用減も追い打ちをかけた。鹿児島県内も例外ではない。自由に動ける態勢づくりへどうすればいいか。地域公共交通の在り方を考える。(連載かごしま地域交通 第1部「ゆらぐ足元」⑦より) 【写真】全国と鹿児島ではこんなに違う。乗り合いバスの輸送人員の推移をグラフで比較
高度経済成長期終盤に当たる1960年代後半、全国で年間100億人台の乗客を運んだバスは、各地域に動脈を張り巡らせていた。70年代以降になると自家用車の普及で、徐々に利用者が減る。 人口減や高齢化が進む近年は取り巻く環境が厳しさを増している。新型コロナウイルス禍や慢性的な運転手不足、2024年春からの残業規制強化による打撃は特に大きい。減便だけでなく、路線自体がなくなる例も目立つ。 国土交通省によると、18~22年度の5年間に廃止された路線は全国で7448キロ。県内では252キロがなくなった。長距離路線の一つ、JR九州バスの鹿児島駅-薩摩中央高校(さつま町)間55.1キロを2往復以上する距離にバスが走らなくなった計算だ。 □ ■ □ 国交省の自動車輸送統計年報によると、14~23年度の全国の輸送人員(高速バス含む)はコロナ禍前の18年度が最多で43億4000万人。本格的な行動制限が始まった20年度に31億2000万人と激減したものの、23年度は5月のコロナ5類移行もあって37億8000万人となり、18年度の9割近くまで持ち直した。
同じ直近10年間の県内の状況をみると、19年度が最多で4058万人を数えた。コロナの影響で20年度が2726万人、22年度は2451万人まで落ち込んだ。各種規制が緩和された23年度も2572万人と19年度の6割ほどにとどまり全国より戻りが鈍い。 コロナ下の需要減からの回復は大都市圏に比べて地方は緩やかだ。国交省の分析で東京、愛知、大阪の三大都市圏の路線が22年度に対20年度比で15.1%増えたのに対し、それ以外の地域は11.0%増と開きがある。 □ ■ □ 路線廃止につながりかねない運転手不足は、全国的に深刻さが増す。日本バス協会の試算で24年度の不足は計2万1000人分。状況が改善しない場合は、30年度に推計3万6000人分が足りなくなる。 公共交通施策のマスタープランである県地域公共交通計画では、担い手不足など公共交通の環境の厳しさから「元の利用者数への回復は困難と見られる状況」と指摘する。
県交通政策課の鈴木圭祐課長は「大都市部に比べて、地方は担い手の獲得や需要の回復に不利なのは否めない。県、市町村、民間事業者、住民とともに具体策に取り組みたい」と話す。 県の計画で、路線バスは今後も地域間や地域内の移動で重要な役割を担うと位置付けられる。存続できる血の通った交通体系をどうつくるか。地域一体での対応は待ったなしだ。 =おわり=
南日本新聞 | 鹿児島