1本100万円の大吟醸酒を限定販売 阪神・淡路で被災の神戸酒心館 震災当時から30年熟成
阪神・淡路大震災から30年に合わせ、酒造会社の神戸酒心館(神戸市東灘区)は来年1月17日、震災当時から約30年間にわたり熟成させた1本100万円の大吟醸酒を5本限定で販売する。売り上げは全額寄付し、震災学習や防災教育に役立ててもらう。10日に予約の受け付けを始めた。 【写真】震災で全壊した神戸酒心館の前身、福寿酒造の木造蔵 同社は1751年創業の福寿酒造が前身で、国内随一の酒どころ、灘五郷の「御影郷」にある。震災で人的被害はなかったが、全ての木造蔵を失った。1996年に他の酒蔵との共同出資で神戸酒心館を設立し、再出発。飲食やイベントを楽しめるホールを建設したほか、銘柄「福寿」をノーベル賞授賞式後の晩さん会に提供するなど、再興に向け独自の存在感を放ってきた。 今回販売する大吟醸酒は震災前、国税庁の全国新酒鑑評会に出品するために仕込んだ酒。難を逃れ、大事に低温保管してきた。国の災害復旧高度化事業で借りた資金の返済を終え、地域への感謝を示そうと商品化を決めた。 商品名は「福寿 復興の一滴」(720ミリリットル入り)。酒米の兵庫県産山田錦を全量使用し、アルコール分は17%。試飲した同社の安福武之助社長(51)は「30年熟成に不安もあったが、おりも全くなく、飲むとまろやかな味わい。お酒の可能性を感じた」と話す。 震災当時を知る社員はほとんどいなくなり、安福社長は「地域の方々に支えられ、私たちの今がある。震災を知らない世代が増え、地域の防災力を高めることに力を注ぎたい」と話す。売り上げは全額、防災教育や震災の記憶継承などに取り組む県内の団体に寄付する。 予約申し込みは同社ホームページで。来年1月16日午後5時締め切り。多数の場合は抽選。高価で繊細な商品のため、同社で直接手渡しするという。 (大盛周平)