入試直前に破産…「ニチガク」講師に聞く実態「社長が代わったのも知らなかった」 倒産相次ぐ学習塾、今後求められるものは
■学習塾の経営、コロナ禍が分岐点に?
孫氏は、ニチガクを「オブラートに包まず言えば、古いだけで特徴がない予備校」と説明する。電話による集客を行い、「特にここ5年ほど『テレアポが激しい』と言われていた。戸別訪問もあった昭和時代の集客法を続けていて、悪い意味で評判だった」という。一方で、「給料未払いが起きているのは、ニチガクだけではないだろう。一般に想像されるよりも、圧倒的にリテラシーがゆるい業界だ」との見方を示す。 森川氏も、「業界全体がブラックだと、20代の頃から言われていた」と同意。「同じような学習塾が、他にあっても不思議ではない。かつて在籍した塾や予備校でも、講師や経理はちゃんとしているが、経営陣がひどいところがあった」と語る。 孫氏は、塾をめぐる環境変化を指摘する。「コロナ禍で集客モデルが完全に変わった。これまではチラシを配っていたが、うちのようにオンラインで、自習室も校舎もない塾が集客できるようになった。指導力とビラ配りで生徒を集めていた塾は、マーケットのインターネット化についていけない。これが大きな事情だろう」。 森川氏は、最初の緊急事態宣言における対応として、「日本中の塾や予備校が2カ月以上休んで、映像などのオンライン授業でやりくりした。しかし、ニチガクともう1つの塾は、コロナ禍でも通常営業し、他の塾・予備校には影響されないという姿勢を貫いていた」と回想する。 清水氏は、塾経営が厳しくなる理由として、少子化によるパイの奪い合いや広告競争、コロナ禍でオンライン学習が発展して塾の必要性が薄れたこと、人件費の高騰で1割ほど支払額が増加したことを挙げる。 現在の受験生はYouTubeやスタディサプリといった動画による勉強に慣れているため、「高い月謝を払って塾に通う価値を見いだせない世代だ」という。「塾の役割はティーチングからコーチングに変わっている。動画教材があふれている中、どうモチベーションを高めて、コーチングしていくか。それがコロナ禍を乗り越えられるかの分かれ道になった」。