「韓和甲空港」「トウガラシを干す空港」 政治的論理で建設された務安空港…鳥の生息地4カ所巡り当初から論争
務安空港は韓国西海岸の渡り鳥の飛来地に近いため、空港建設初期から問題が提起されてきた。務安空港に近い全羅南道務安郡玄慶面・雲南面では約1万2000羽の冬の渡り鳥が観察されている。この地域には面積113.34平方キロメートルに達する大規模な務安干潟湿地保護区域などが設けられており、渡り鳥の中間経由地となっている。務安空港の戦略環境影響評価の際にも「機体が鳥と衝突する危険がある」という問題が提起された。2020年の報告書は「航空機が離着陸する際、鳥との衝突危険性が高い」とし、「それを軽減する方策が必要と判断される」と分析している。報告書は爆音機、警報機を設置したり、レーザー、旗、LED照明などを使ったりしてバードストライクの可能性を最小化すべきだという具体策まで示したが、滑走路拡張事業が終わっていないという理由で実行されなかったという。 務安空港は仁川空港を除く全国14空港でバードストライクの頻度が最も高い。2019年から今年8月まで務安空港には旅客便、貨物便合計で1万1004便が離発着したが、10件のバードストライクが発生した。便数と比較した発生割合は0.09%で、済州空港(0.013%)、金浦空港(0.018%)などに比べはるかに高い。務安空港にはバードストライク予防委員会が設置されているが、しっかり機能していなかったとの指摘が出ている。 務安空港の管制塔など関係者の経験不足が被害を拡大させたとの見方もある。2007年に開港した務安空港にはコロナ前に日本、台湾、ベトナムなどへの国際不定期便・チャーター便が一時就航していたが、昨年12月まで国際定期便の運航は一度もなかった。事故が起きた務安~バンコク線はチェジュ航空が12月8日に運航を始めた新路線で、開港から17年目で初めて就航した国際定期便だった。また、務安空港を管理する韓国空港公社は昨年4月、文在寅(ムン・ジェイン)政権で任命された社長が辞表を提出して以降、8カ月も後任が決まっていない。機長経験者は「バードストライクの警告があった2分後に『メーデー(緊急事態)』の宣言があった。非常に緊迫した状態だが、その過程で管制がまともに行われたのか、胴体着陸以外の選択肢は不可能だったのかなどを究明しなければならない」と話した。航空機の胴体着陸に際しては、空港消防隊が待機した後、滑走路に火災防止のための消火薬剤をまくなどすべきだったが、そうした手順も実行されなかった。 ■務安空港 金大中(キム・デジュン)政権下の1999年に着工され、2007年に開港した。近隣に空港があるにもかかわらず、地元の支持を集めるための「人気取りの公約」として推進され、当時事業を主導した地元出身の韓和甲(ハン・ファガプ)国会議員の名前を冠し、「韓和甲空港」とも呼ばれる。開港前に年間992万人が利用すると予測されたが、2023年の利用客は24万6000人にとどまった。利用客がおらず、滑走路で住民がトウガラシを天日干しする場面が目撃され「トウガラシを干す空港」とも皮肉られた。 キム・アサ記者、カン・ダウン記者、キム・ビョングォン記者