9人目PKで幕を閉じた夏…冬はゴールも重ねる帝京大可児2年生MF伊藤彰一「今度は自分が勝たせられるように」
[11.2 選手権岐阜県予選準決勝 帝京大可児高 4-1 大垣日大高 長良川球] 2-1の時間が続いた後半12分、帝京大可児高の決勝進出を決定づけたのは2年生ボランチの果敢な配球だった。ペナルティエリア際でこぼれ球を拾ったMF伊藤彰一(2年=FC.フェルボール愛知)は相手が寄せてこないのを確認すると、そのままダイレクトで浮き球をゴール前へ。これが相手に当たって軌道を変え、ゴール左隅に吸い込まれた。 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 蹴り出したボールはゴール右に向かっており、シュートかと思われたが、「クロスを上げようと思ったけど、それが相手に当たって上手く入って良かった」と正直に明かした伊藤。ただ、準々決勝・岐阜聖徳学園高戦に続いて大事な試合での2試合連続ゴールとあり、「選手権で2試合連続で決められて良かった」と素直な喜びも口にした。 昨季の主力選手が先発の半数以上を占め、充実の世代と言える今季の帝京大可児だが、伊藤とMF松井空音(3年)のコンビも“継続組”。仲井正剛監督は伊藤について「松井とのバランスがすごくいい。松井がすごくしつこいので、伊藤がシンプルにやることでお互いの良さが出ている」と信頼を口にする。 この日はピッチに水たまりが散発する難しいコンディションだったが、中盤の2人でオープンになりすぎないゲームメイクを継続。伊藤は「(松井が)いろんなことをやってくれるので、自分はフリーなところにいてパスコースを作ったり、相手が来た時にワンタッチで出したり、支えてもらいながらやっている」と先輩を立てたが、相方を支える伊藤の的確かつシンプルな配球も出色の出来だった。 また試合の流れを受けてのゲームコントロールも見事だった。序盤はリスクを避けた戦い方が目立ったが、時間を経るごとに押し込み続ける時間が増加。試合中には松井とのコミュニケーションの欠かさなかったといい、伊藤は「最初は簡単に行こうというふうにやっていて、そうすると相手が下がってくるので、もう一人が空くのでつなごうと思っていた。そこを上手く切り替えながらできた」と手応えを口にした。 1年時から帝京大可児のメンバー入りを果たした伊藤にとって、今大会は先輩と共に過ごせる最後の選手権。松井のプレーを横で見ながら「もっと自分一人でできるようにならないといけない」と刺激を受ける2年生MFは「もともと選手権に出たいと思ってここ(帝京大可児)に来た。1年生から先輩に支えてもらいながら成長してきたし、来年はもっと自分が引っ張っていけるようにならないといけないので、この選手権で成長したい」と意気込む。 また先輩方には大きな大きな恩もある。今年夏のインターハイ2回戦、帝京大可児は神奈川の桐光学園高を相手にPK戦にもつれ込む死闘を演じた中、伊藤は9人目のキッカーを担当。だが、自身のキックがGKに阻まれ、無念の敗退を喫していた。 「自分は泣いていたけど、3年生のみんなは泣かずに『大丈夫だ』って言ってくれた。『切り替えて、選手権もあるから、来年もあるから』って言ってくれて、それが支えになって切り替えて夏休みを過ごすことができた」(伊藤) 今回の選手権は先輩方に恩返しをすべく、もともと得意だったPKもさらに練習を重ねてきた。「自分が3年生のインターハイを終わらせてしまった悔しい思いがある。冬は自分が逆に助けられるように、自分が勝たせられるように点に絡んで、今度は自分のおかげで勝ったと思ってもらえるようにしたい」。まずは9日の決勝で全国切符を勝ち取り、長い冬を過ごすつもりだ。