「米国に従属するな」「立ち上がれ日本人」 来日したマレーシア元首相が“日本経済の復権”に大きく期待するワケ 過去には国産自動車メーカー設立も
マハティール氏、日本外交に警鐘
2024年5月25日に筆者(坪内隆彦、経済ジャーナリスト)は訪日中のマハティール氏にインタビューしたが、日本が米国に追従して中国と敵対するのではなく、主体的な立場でアジアの発展を支えることを期待していることがはっきりした。 「すでに終戦から80年近くがたち、状況は変わりつつあります。日本は米国に追随するべきではなく、独立した外交政策を持つべきです。例えば、マレーシアは他国がいかなる体制であろうとも、対峙(たいじ)することなく、友好的になりたいと考えています。しかし、日本は中国とさえ友好的になることを米国に許されていません。日本は米国から自由になり、東アジアの声を世界に発信していってもらいたい」 さらにマハティール氏は、国家間の対立は話し合いで解決すべきだと力説した上で、米国の政策を厳しく批判した。 「世界最大の武器製造国であり、武器取引国である米国にとって、戦争が起きることはよいことなのです。私たちは、米国がウクライナとロシアの間の戦争を誘発したことも知っています。そしていま、彼らは台湾と中国の間の緊張をあおっています。私は、常に米国は他の国々を挑発し、衝突させようとしていると考えています。もちろん、『米国は世界の民主主義を促進したいと考えているのだ』と主張する人もいるでしょう。しかし、ある国が民主的ではないからという理由で、戦争によって政権交代をさせるという考え方は間違っています。そうした米国のやり方は民主主義の原則に反しています」 同時に、マハティール氏は日本が米国型の経済システムを模倣するのではなく、日本の文化に基づいた独自の経済システムに自信を持つことを願っている。同氏は 「日本経済も日本社会も、1990年代に米国のシステムを取り入れたときから転落している」 と指摘している。
「日本人よ、いまこそ立ち上がれ」
筆者が2015年6月に行ったインタビューでは、同氏は次のように語っていた。 「ドイツと日本とを比較してみましょう。いまドイツは、ヨーロッパでも世界でも大きな役割を果たしています。しかし、日本は米国に従属しています。日本には主体的な政策がありません。経営システムですら、米国のまねをするようになってしまいました。かつて日本には終身雇用もありました。ところがいま、日本には独自の政策がありません」 すでに同氏は2003(平成15)年に著した『立ち上がれ日本人』(新潮社)においても、日本独自の経済システムの重要性や、アジアにおける日本のリーダーシップの重要性を強調し、 「日本に立ち止まっている時間はない。日本人よ、いまこそ立ち上がれ」 と訴えている。 日本人はマハティール氏の声に耳を傾け、日本の産業界が主体的な立場でアジアに貢献することを心掛ける必要があるのかもしれない。
坪内隆彦(経済ジャーナリスト)