<イラン核開発の懸念>機能しなくなった監視、ガザ戦争の間隙を縫って加速化か
3月4日、IAEAの事務局長が、「IAEAがイランの遠心分離機の台数や濃縮ウランの備蓄量等についてデータを継続的に得られなくなった」と報告した。これにつきウォールストリート・ジャーナル紙の3月6日付け社説‘Whistling Past the Iranian Nuclear’は、報告はイランが核武装のために秘密裏に活動している可能性を意味するので、バイデン政権は及び腰だが、イランにこれ以上エスカレーションさせないようにするべきである、と主張している。要旨は次の通り。 バイデン政権は、イランの核開発問題が無くなったように振る舞っているがそんなことはない。3月4日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、「イランの濃縮ウランの備蓄量、遠心分離機の生産数、配備数、重水とイエローケーキ(精錬されたウラン鉱石)についてのデータを継続的に得られなくなった」と明らかにした。平たく言えば、イランが核武装のために新型の遠心分離機を秘密裏に増やしている可能性があるということだ。 IAEAの新しい四半期報告では、イランは批判をかわすために濃度60%の濃縮ウランの量を僅かに減らしたが、イランの濃縮ウランの備蓄は増え続けており、「イランは、核爆弾13発分相当の濃縮ウランを濃縮することが可能であり、一旦、核爆弾の製造に踏み切れば最初の1カ月で核爆弾7発分の濃縮ウランを製造できる」との見通しもある。
イラン側は、ウラン濃縮のモニタリングのために重要な機材の持ち込みを認めず、経験豊富な査察官を排除している。これではイランが核物質を新たな申告されていない核施設に搬入しても、それをIAEAが見つけることを期待できない。 イランの核武装への野心にバイデン大統領はどう対応しようとしているのであろうか。ロイター通信によれば、(この事務局長の報告に対応して)英仏独の3カ国がIAEAの理事会でイランを非難する声明を出そうとしたが、「米国は、イランとの摩擦がエスカレートするリスクを取りたくなかった」ので反対した。まして、非難する代わりにイランに対して何かインセンティブを与える方法は全く間違っている。(註:昨年春以来、バイデン政権がイランの凍結資産の解除や石油禁輸の監視を緩めたこと。) グロッシ事務局長は、そのスピーチで2月12日のサレーヒ元イラン原子力庁長官の、「イランは、核兵器を製造するために必要な全てのコンポーネントを保有しており、後は組み立てるだけだ」という発言を引用している。バイデン大統領はこれまでやってきた以上の事をして、イランにこれ以上のエスカレーションをさせない必要がある。 * * *