16戦全敗、多国籍チームが示した独立リーグの存在意義 九州アジアリーグが目指す「すそのからの野球普及」
野球の独立リーグ、九州アジアリーグは来年で発足から5年目を迎える。熊本の火の国サラマンダーズ、大分B―リングスの2チームから始まり、北九州(北九州下関フェニックス)、宮崎(宮崎サンシャインズ)と地域に根を張り、今季は佐賀を拠点に佐賀インドネシアドリームズが準加盟。九州の野球人気を地域から支え、アジアの野球振興にも目を向ける。 ■「幸せでした」大分B-リングスの内川聖一が感謝のラストメッセージ【動画】 2021年に開幕した九州アジアリーグは実業家の堀江貴文氏がオーナーを務める北九州下関フェニックス(当時は福岡北九州フェニックス)、ソフトバンクなどで活躍した内川聖一氏が現役引退時にプレーした地元の大分B―リングスなど話題を呼ぶチームも多い。 今季は新たに佐賀インドネシアドリームズが参戦。佐賀県の武雄、嬉野両市とホームタウン協定を結んだ同チームに九州アジアリーグの徳丸哲史代表はリーグが進むべき方向性の大きな可能性とヒントを得たという。「地域に愛されることが私たちリーグの存在価値と感じました」 佐賀インドネシアドリームズはインドネシアを中心に、フィリピン、スリランカなど東南アジア各国の代表選手などで結成。ビザなど必要な手続きを済ませることでも大きなハードルがある中で、選手たちは母国での仕事を辞めるなどして野球にかけて来日した。 ただ、日本野球機構(NPB)を目指す選手も多い他のチームとは力の差まだ大きい。リーグは準加盟として正加盟チームよりも試合数を少なくしたが、今季の公式戦成績は16戦全敗だった。
それでも徳丸代表はホームタウンの人たちが熱心に異国の選手たちを応援する姿を見て「試合数が少ない分、地域とふれあう機会が多くなった。こういった活動が必要と感じました」と強調する。選手たちは嬉野市の老舗旅館「和多屋別荘」の施設で生活。試合や練習の合間に農作業を手伝ったり、夏祭りに参加したりして積極的に地域に溶け込み、両市の市民にとって貴重な国際交流の機会にもなった。 今年1月には北九州下関フェニックスが北九州市内の飲食店街で起きた大規模火災の被災事業者らを支援しようと募金活動を行うなど正加盟4チームも地域貢献活動に熱心だ。リーグは来年、正加盟4チームの公式戦の試合数を今季76試合から65試合前後にする予定。「その分を地域交流や貢献活動に当てて欲しいと思っています。今も十分にやってもらっているけど、もっといろいろな(地域の)交流ができれば」。今季は夏場のダブルヘッダーもあったため、選手たちの負担軽減にもなるという。 徳丸代表は日本の野球人口の減少に強い危機感を抱く。NPBのソフトバンクを中心に野球人気が高い九州でも状況は変わらない。地域との触れ合いや野球教室などを通して子どもたちに競技の魅力を知ってもらい、九州全体で野球を活性化させるのもリーグの存在意義だと考える。「まずは全県にチームができたらいいと思っています。すそのから野球普及をやっていきたい。子どもたちが野球をする機会をどう増やしていくか」と強く思う。
同リーグの事務局長を務めてきた徳丸代表は来季で就任3年目。大分県出身で明大、社会人の三菱ふそう川崎(活動休止)と強豪でエースとして活躍した。アトランタ五輪を目指す日本代表にも選ばれたが、けがにも苦しみ、プロ入りはならなかった。現役を引退後に熊本で社会人チームの監督などを歴任。熊本の球団や九州アジアリーグの設立準備に関わった。 「多くの選手がNPBに羽ばたいてほしいと思っています。将来的にはアジアの選手もこのリーグからNPBに入る選手が出てくれば」。けがで苦しみ、所属したチームが廃部になった経験があるからこそ、リーグの多くの選手が夢をつかむことも期待している。
西日本新聞社