東武博物館「スカイツリーライン高架下」に広がる異空間 限られたスペースに展示車両がずらりと並ぶ
もしかすると、どんどん増える資料の中にも、鉄道ファン垂涎の“お宝”が眠っているかもしれない。 と、一つひとつを細かく見ていくと、とうてい1時間やそこらでは終わらないくらいの充実した博物館。決して広いとはいえない高架下のスペースをうまく活用した保存車両の展示は神ワザといっていい。運転中の列車の台車が目の前を通るプロムナードも、いつまでも見ていられるほどだ。歴史資料だって、当時の息吹を感じられる貴重なものばかりだ……。
「実は東武博物館で保有している保存車両はこれだけではないんです。SL大樹で使っている蒸気機関車も、博物館で保有しているんです。2012年には8000系も1編成保有して、動態保存しています。8000系はいまも現役ではありますが、輸送力増強に貢献した車両で、いまにも通じる基本設計車両。その価値を考えて、博物館で保有して動態保存することにしました」(山田館長) その8000系、東武博物館で主催する少年サッカー・少年野球大会での優勝チームの写真を飾ったメモリアルトレインなどとしても運転されていて、基本的にアーバンパークラインでの運用に就いている。
■動態保存も手がける 「これからも、特急車両などを中心に保存すべき車両が出てくると思います。館内に展示するスペースが厳しいので、どうしていくか。悩ましいですが、それでも車両は一度壊してしまったらもう二度と復活することはできないですからね。動態保存を含め、なんとかして残していきたいと思っています」(山田館長) まさにこれこそ博物館の最大の役割、というわけだ。 これまでは鉄道ファンや地元の子どもたちなどが来館者のメインだった。それが、最近はインバウンド隆盛、欧米の観光客もしばしば足を運ぶようになっている。
学芸員の山田さんは「なかなか追いつかないこともありますが、隔月で発行している『東武博物館だより』などを通じて、少しでも博物館の取り組みを知ってもらいたい」と話す。 関東地方の私鉄の雄・東武鉄道。開業から120年を超えるその歴史を支えてきた車両たちとさまざまな資料、そして地域との関わり。それが一覧できる東武博物館は、もしかすると東京の下町さんぽでは外せないスポットなのかもしれない。
鼠入 昌史 :ライター