手がちぎれるほど瓶をふって混ぜていたのは無意味だった…カンタンなのに美味しすぎる本場<フレンチドレッシングレシピ>と<より美味しくなる裏技>紹介
◆保存しておけるトマトソース ソフィーからは、多忙な母親らしいレシピも教わった。保存しておけるトマトソースだ。 ざく切りにした玉ねぎとニンニクをオリーブ油でよく炒めてから、生のトマトとローリエを入れて煮込む。煮詰まったらブレンダーにかけて、塩コショウで味をつけるだけ。叔母のアイスクリームと同様に、彼女もそのオレンジ色のなめらかなソースをガラスのビンに詰めて、冷凍室で保存していた。 これをかけると子供がなんでも食べるといってパスタや茹でた野菜にかけて食べさせていたが、子供でなくてもあとをひく美味しさで、すっかり我が家の定番になっている。茹でたパスタをそのトマトソースであえて、バジルの葉とパルメザンチーズをのせれば、立派なメニューになる。 ソフィーは完熟トマトを贅沢に使っていたけれど、日本はトマトも季節によっては高いから、私はトマト缶で代用することも多い。それでも美味しいものができる。作ったそばから完食してしまうので冷凍することもないけれど。
◆不透明さがない ドレッシングにしろ、トマトソースにしろシンプルで、少ない手間で作れるからありがたいレシピだ。でも、シンプルなものこそ、素材が良くないと美味しくない、ということがある。 私の場合、金に糸目をつけないで材料が買えるほど、生活に余裕はない。オリーブ油など輸入ものになればなおのこと、選びだしたら大変な値段になってしまう。それでも、たとえ高価なものを使えなくても、シンプルなものを作ることが、今の時代には必要かもしれない。叔母と同じく、物を多く置かないソフィーのキッチンを見て思った。 ここでは、自分がなにを食べているかがよくわかり、不透明さがない。 添加物を加えて無理に乳化させてあるものは、扱いやすく舌に心地よいけれど、なにが入っているかもよくわからないし、自分がなにを食べているかも、あまり考えなくなってしまう。 「ドレッシング」というくくりではなく、オイル、ビネガー、スパイスを、個々に感じつつ、舌の上で初めて調和させて楽しむと、素材の味にも結果、敏感になってくる。 週末に時間をかけて作るような手のこんだフランス家庭料理もいくつか教わったけれど、結局、日本に帰ってきてから一番作っているのは、簡単にできる四角いバゲットと、ドレッシングと、トマトソースだ。 どれも彼女たちが使っているほど良い素材は使っていないけど、同じ値段のトマト缶でも、こっちは美味しいとか不味いとか、味に少し敏感になってきたように感じる。 ※本稿は、『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』(幻冬舎文庫)の一部を再編集したものです。
中島たい子
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