第37回東京国際映画祭、ラインナップが発表!フェスティバル・ナビゲーター就任の菊地凛子は「精一杯、応援していきたい」と意気込み
10月28日(月)~11月6日(水)に開催される第37回東京国際映画祭(TIFF)のラインナップ発表記者会見が9月25日に東京都内で開催され、「コンペティション」部門を始め、全上映作品が発表となった。本年度フェスティバル・ナビゲーターを務める俳優の菊地凛子、「コンペティション」部門に選ばれた大九明子監督(『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』)、吉田大八監督(『敵』)、片山慎三監督(『雨の中の慾情』)、Nippon Cinema Now 部門において特集される入江悠監督も出席。映画祭への想いを語った。 【写真を見る】菊地凛子、デコルテ見せのブラックドレスで登場 東京国際映画祭は世界中から優れた映画が集まる、アジア最大級の映画の祭典。今年の「コンペティション」部門には110の国と地域から2023本がエントリー。厳正な審査を経た15本が期間中に上映され、クロージングセレモニーで各賞が決定する。映画祭の顔となるコンペティション部門の審査委員長は、俳優のトニー・レオンが務める。会見には安藤裕康(東京国際映画祭チェアマン)、池田香織(TIFF COM事務局長)、市山尚三(プログラミング・ディレクター)、藤津亮太(「アニメーション部門」 プログラミング・アドバイザー)、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ(「ウィメンズ・エンパワーメント部門」シニア・プログラマー)も出席した。 チェアマンの安藤は映画祭の開催にあたって、世界との交流、未来の人材育成、女性への視座という3つのポイントをあげた。女性の視座として、東京都との連携で「ウィメンズ・エンパワーメント部門」を新設。女性の複雑な諸相を描いた、女性監督による作品を特集するという。安藤は「選定にあたっていただくのは、外国人として初めて我々の映画祭のプログラマーを務める、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチさん。この部門の特別上映として、女性の活躍を印象付ける作品である『劇場版ドクターX』を上映します」と発表した。 ツヴェトコビッチは「あまりにも長い間、監督の座や映像の物語は、男性の視点に支配され、女性のストーリーは影を潜めていました。たくさんの女性による映画への貢献を忘れてはなりません」と切り出し、「新しくパワフルな女性の声が台頭している。2021年にTIFFはアジアの映画祭として初めて『Collectif 50/50』(映画界での男女平等を推進している国際団体)に署名し、映画業界における男女平等を目指す世界的なムーブメントに参加しました。この部門は東京都との共催により、その取り組みをさらに一歩前に進めるもの」と力強く語った。 本年度フェスティバル・ナビゲーターを任されたのが、菊地凛子だ。「ナビゲーターという大役を授かりました。微力ながら精一杯、映画祭を応援していきたい」と意気込んだ菊地は、「日本を代表する国際映画祭のナビゲーターという大役。私で務まるのかという不安もありましたが、光栄です」と感激しきり。これまでも各国の映画祭に参加してきたが、「皆さんに応援してもらっている、ご褒美をもらったような気持ちになる。なんとも言えない感動がある」と自身にとって映画祭は特別な場所だという。 菊地は本年度の審査員長であるレオンともこれまでの映画祭で面識があり、「大先輩で、目の前を歩くすばらしい俳優さん。映画という会話でお話をできるのは、なによりも代え難い宝物の瞬間。すごく気さくな方で、『久しぶり、元気だった?』と言ってくださった」とにっこり。司会から「自身にとって映画とは?」と尋ねられると「映画を観て育ってきて、映画のなかでいろいろなことを学んだ。主人公と同じように傷ついたりして、でも映画を観終わったころには『明日も頑張ろう』と思える。映画の世界を旅することによって、自分も同じ喜びや痛みを味わって、その人の人生を持って帰れるような気がする。映画でいろいろなことを学び、自分が出演することでそれをお返しできるような気がする。自分にとっては、大切な、大切な宝物」と愛情を傾けていた。 コンペティション部門には、萩原利久と河合優実が出演する大九監督による『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』、長塚京三が引退した大学教授を演じる吉田監督作品『敵』、つげ義春の短編漫画を片山監督が映画化した『雨の中の慾情』の3作品が選出された。そしてこの1年の間に公開された日本映画を対象に、“特に海外に紹介されるべき日本映画”という観点から選考された作品を上映する「Nippon Cinema Now」部門では、特集企画として入江悠監督の作品が特集される。入江監督の名を世に知らしめた『SR サイタマノラッパー』(08)をはじめとした「SR サイタマノラッパー」シリーズ3作品も上映されるが、入江監督は「『SR サイタマノラッパー』を初めて東京国際映画祭で上映していただいた時、当時は尖っていて、みんなでジャージで登壇した。ついに自分もスーツで来るようになったかと思って。帰ってこられてうれしいです」と感慨を語り、会場を笑わせていた。 記者からは同映画祭に期待することに関して質問があがり、大九監督は「私自身もこの映画祭に見つけていただいたことで、違う世界が広がっていった。私もどんどん新しい監督と出会いたいし、そういう場になっていけば。東京からさらに世界へという、すべての作品に開かれたチャンスが増えていったらいいなと思います」、吉田監督は「人が集まって映画を観るというのは、バラバラの時とは違ったパワーが出る。映画祭に今後期待するのは、できるだけ長く続けてほしいということ」と希望。 菊地は「いろいろなクリエイターの人たちが、映画祭を通して繋がっていくことが大事だと思っている。(今日は)監督方とお会いしたので、自分をアピールして帰りたい」と目尻を下げ、片山監督は「映画を好きじゃない人が、この映画祭をどのように知って、普段は観られないような作品をどう観るかが大事だと思う。そのあたりをもう少し広げていってもらえたらうれしい」とより幅広い層への認知度の向上を願った。入江監督は「これまで韓国やインドネシア、シンガポールで映画を撮ってきた経験からすると、いま日本の映画の制作現場が貧しくなってきているなと感じる。海外のゲストの人も含めて、これから映画をどうやってつくっていくかを話し合い、発信する場になっていけばいいなと思います」と身をもって感じたことを口にしつつ、未来を見つめた。また安藤チェアマンが「独自のカラーを持った映画祭をつくっていきたい」と熱意を口にするひと幕も。「アジアとの交流、アジアの作品に目をつけて、東京に行けばアジア、日本がどういうところなのかわかるような映画祭にしていきたい。アジアを世界にアピールしていく映画祭にしたい」と力を込めていた。 第37回東京国際映画祭は、10月28日(月)~11月6日(水)まで、日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区にて開催。映画人同士のトークイベントや屋外上映会、サーチライト・ピクチャーズ設立30周年企画をはじめ、あらゆる角度から映画を見つめた、バラエティに富んだ取り組みが行われる。 第37回東京国際映画祭 主なラインナップ ●オープニング 『十一人の賊軍』(白石和彌監督/11月1日公開) ●クロージング 『マルチェロ・ミオ』(クリストフ・オノレ監督) ●コンペティション部門 『アディオス・アミーゴ』(イパン・D・ガオナ監督/コロンビア) 『小さな私』(ヤン・リーナー監督/中国) 『死体を埋めろ』(マルコ・ドゥトラ監督/ブラジル) 『士官候補生』(アディルハン・イェルジャノフ監督/カザフスタン) 『娘の娘』(ホアン・シー監督/台湾) 『英国人の手紙』(セルジオ・グラシアーノ監督/ポルトガル) 『彼のイメージ』(ティエリー・ド・ペレッティ監督/フランス) 『雨の中の慾情』(片山慎三監督/日本、台湾) 『わが友アンドレ』(ドン・ズージェン監督/中国) 『お父さん』(フィリップ・ユン監督/香港) 『大丈夫と約束して』(カタリナ・グラマトヴァ監督/スロバキア、チェコ) 『今日空が一番好き、とまだ言えない僕は』(大九明子監督/日本) 『敵』(吉田大八監督/日本) 『トラフィック』(テオドラ・アナ・ミハイ監督/ルーマニア、ベルギー、オランダ) 『チャオ・イェンの思い』(ミディ・ジー監督/中国) 取材・文/成田おり枝