対ウクライナ侵攻長期化の中、ロシア国民3割超が核使用容認 高まる攻撃論、意識変容の背景にあるものは?
同氏は欧米によるウクライナ支援をやめさせ、ロシアが最終的に勝利するために限定的な核使用もやむを得ないとの考えを提唱、大きな波紋を呼んだ。 一方、プーチン大統領は昨年3月、隣国の同盟国ベラルーシに戦術核を配備すると表明。同6月には第1陣を搬入したことを明らかにした。 また、ロシア国防省は今年5月、侵攻の拠点となっている南部軍管区で軍事演習を開始。演習には核弾頭搭載可能な弾道ミサイルを運用する部隊が参加。空軍部隊が極超音速ミサイルに「特殊弾頭」を装備して出撃する訓練も行うなど戦術核使用を想定した内容となっている。 ロシアはさらに、現在は大量破壊兵器による攻撃を受けた場合や、「国家存続の危機」に立った場合のみ核攻撃を行う権利があると規定している軍事ドクトリンを改め、核使用の敷居を下げる動きも見せている。プーチン大統領が今年6月、国際経済フォーラムで見直しの可能性に言及。その後、大統領報道官が見直し開始を公式に認めた。
侵攻の長期化や前線での膠着(こうちゃく)、ウクライナ軍によるロシア国内の攻撃などに加え、こうした動きが国民の意識変容に結びついている可能性もある。 米誌フォーブス・ロシア語版は昨年6月、「これまでは核使用の論議は極端な思想を持つ人に限られていたが、今や一般の専門家が論じ始めている。次の段階は、核問題を社会的空間や政治プロセスに移すことで、これはあり得ないことではない」と警告する論文を掲載していた。 ▽英独も 核に対する意識が変容しているのはロシアだけではない。 ドイツは米国の核兵器を国内に受け入れ共同運用する「核共有」に参加しているが、伝統的に非核世論は強く、ウクライナ侵攻前の2021年に誕生したショルツ連立政権は、先進7カ国(G7)では初めて核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を表明するなど非核色の強い政策を進めた。 しかし、ウクライナ侵攻後に世論は一変。ドイツ公共放送NDRが2022年6月に公表した世論調査で、52%のドイツ人が米国の核兵器配備継続を支持した。支持が過半数となるのは同調査で初めてだという。
また、「終末時計」計測で有名な米誌ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツによると、核兵器廃絶を目指す科学者らの国際組織「パグウォッシュ会議」英国支部などが昨年1月に行った世論調査で、核保有を支持する英国人の3分の2が、ロシアのウクライナ侵攻で支持の気持ちが強まったと回答。一方、核保有に反対していた人の16%は、侵攻後に保有支持に意見を変えたと回答した。