種子代高くても「これなしで経営考えられない」…民間品種に賭ける農家たち
収穫期の分散がメリットの「みつひかり」
このイカリファームから直線距離で5キロ足らず。同じ琵琶湖を望む野洲市に「グリーンちゅうず」が本社を構えています。1994年に全国第一号の特定農業法人として認定を受け、約200ヘクタールの田畑で農作業を受託。米、麦、大豆などを生産する中で、主力となっているのが、やはり民間開発の米だというのです。 その「みつひかり」は三井化学アグロが2000年代に開発したハイブリッド米。従来の品種より1.5倍以上も長い穂を実らせます。「グリーンちゅうず」は周辺の農家が栽培していたことから2002年に本格導入。最初は1ヘクタールほどだった作付面積を徐々に拡大し、近年は50ヘクタールを超えました。 「一番のメリットは多収に加えて、収穫時期を分散させられること」とグリーンちゅうず取締役兼総務部長の萩野健介さん。 「コシヒカリや日本晴は8月から9月に収穫期が集中するため、我々のように自社で乾燥調整する農場だと、せっかく収穫しても乾燥機の容量が足りずに作業が滞ってしまいます。みつひかりは収穫が遅くても品質に影響が出ない。例年は11月中旬、長いと12月まで収穫ができます」 収穫期の分散は、やはり晩生の「しきゆたか」を導入するイカリファームもメリットとして強調していました。ただ、グリーンちゅうずのスタンスとして違うのは「みつひかり」を「低価格の業務用米」と割り切っているところでした。 「みつひかりには日本晴系統の『2003』とコシヒカリ系統の『2005』があり、味がよいのは『2005』なのですが、収量や病害耐性がやや劣ります。そのため今は『2003』のみを栽培し、米卸を通してファミリーレストランや牛丼チェーン、酒米用などに出荷しています」 「みつひかり」の種子代は一般品種の6倍ほど高く、肥料も1.5倍ほど多く必要。さらに草丈が長く、茎や籾が硬いため、コンバインなどの機械の損傷が激しいそうです。「業務用米としての需要は増えていますが、機械のメンテナンスや更新にかかるコストと比較して、今後を検討中」と萩野さんは控えめに話しました。