「望まれない女子」 男女の人口比がいびつな地域が物語る悲しい現実
インドやバングラデッシュなどの保守的な田舎部では、普通ならほぼ半々であるはずの男女の人口比がいびつになって、男ばかりが多いという地域が少なくない。こういう社会では、女子は「望まれない存在」だからだ。 女子は育てても結局嫁にいって家を出てしまう上、結婚する際にダウリーと呼ばれる持参金を持たせなくてはならないので金がかかる。反面、男子、特に長男は家を継ぎ、将来一家の柱となる存在だ。そんな理由から、妊娠した子が女とわかると、中絶したり、さらにひどい場合は、生まれてすぐに殺してしまうこともある。世界は男だけでは成り立たないことは誰もが承知しているはずなのに、自分の家には男子が欲しい、という身勝手で歪んだ願望だが、日本でも長男優遇の風潮はひと昔前まで当たり前だった。 男女の人口比を是正するために、インドでは90年半ば、医師が胎児の性別判定を親に知らせることを禁止した。教育が浸透するに従って最近は性別を理由とした中絶はかなり減ってきたが、それでも名誉殺人、多発するレイプなど、まだまだ社会の「女子軽視」は変わらない。 とはいえ、米国でさえ女性軽視の典型であるトランプ大統領が選ばれてしまうほどだから、その“民度”はインドとそれほど変わりはないか……。 (2016年3月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォトジャーナル<人口増加の脅威>」の一部を抜粋したものです。