三菱UFJ銀行、再生支援の取り組みを加速 ~ 「再生ファイナンスチーム」立ち上げの狙いと今後 ~
コロナ禍から平時に移行するなかで、再建型法的整理や準則型私的整理など抜本再生に向けた動きが活発化している。再生局面では資金繰りの維持が重要だが、かつて「信用不安企業への新規融資はご法度」との認識が金融界で定着していた。だが、近年はレンダー(資金の出し手)の取り組みが進み、再生実務家との交流も活発になるなど状況は大きく変わっている。 三菱UFJ銀行(TSR企業コード: 299000052)は2023年4月に専門チームを立ち上げ、再生局面にある企業の支援を加速させている。東京商工リサーチ(TSR)は、コーポレート情報営業部・佐藤友部長、同部再生ファイナンスチーム・後田太盛次長(特命担当)、熊谷大樹調査役に取り組み推進の意図などを聞いた。
◇ ◇ ◇ ―「再生ファイナンスチーム」立ち上げの意図、経緯は (佐藤)2023年4月にコーポレート情報営業部の中に再生ファイナンスチームを新設した。長年にわたり再生局面にある企業向けファイナンスについて研究し、どういった取り組みを目指すべきかの議論を行内で重ねてきた。コーポレート情報営業部は様々なステージにある企業様に寄り添ったサポートに取り組んでいる。 時代の移り変わりとともに、成長産業領域のスタートアップ支援や事業承継への取り組みも本格化してサポート領域を広げた。企業ごとに最適なソリューションを提供することで経営を支援し、発展する機会をさらに広げていただきたい、との想いがチーム立ち上げの根底にある。 昨今、コロナ禍を経てバランスシートは痛んでしまったものの、事業力自体は傷ついておらず、今後の成長が期待される企業は少なくない。こうした企業がバランスシートを綺麗にすることで復活を果たし、産業を担う存在として再び発展してもらいたいとの想いは、過去のリーマンショックなどの経験を経て、長年かけて醸成されたものだ。 ―チームの体制は (佐藤)企業と向き合う接点となるフロントラインの担当者は3人。ドキュメンテーションなどバックオフィスや弁護士も含めると総勢11人だ。 ―再生人材の育成には時間がかかる。また、再生局面におけるファイナンスの打診は「銀行名」より「担当者との信頼関係」が重要との声が再生実務家の中にはあると聞く (佐藤)高い専門性が求められるので、そうした声はあるだろう。事業再生に精通し、行内で審査の経験に長けた人物が現在のチームメンバーだ。今後の人材育成については、弊行には「資格Ex」(※1)制度があり、他へ異動することなく、その業務エリア内でキャリアを積み重ねていくことで専門性を高める枠組みがある。将来的にはこういった枠組みを再生ファイナンスの業務エリアにも適用することを検討してもいいと考えている。 ※1 「自律的な行動変容」を促すことを目的とした三菱UFJ銀行独自の制度。2024年4月から専門性の活用・向上を希望する行員を対象に「エキスパート資格」を導入する