「ウズラの卵 食べ方教えて」 給食提供除外の動きに産地困惑
貼り紙で「十分にご注意ください」
福岡県みやま市の小学生(7)が2月下旬、給食を喉に詰まらせて死亡した事故を受け、原因になったとみられるウズラの卵が一部自治体の給食から除外されるなど影響が広がっていることについて、産地や消費者から「ウズラ卵が敬遠されるのは残念だ」「そしゃく教育が重要になる」などの声が出ている。 群馬県高崎市の高橋クエイルの直売店舗「う玉屋」。事故の直後から店内に「お子様やお年寄りの方は、卵を喉に詰まらせないように十分にご注意ください」と記した紙を貼り始めた。生卵を購入する人には、注意喚起した小さな紙を添え、会計時に口頭でも呼びかける。 同社は県内に三つの農場を構え、ウズラを65万羽飼育。全国の約20%を占める。社長の串田幹雄さん(53)は「亡くなった児童とその家族は本当に気の毒に思う」とした上で「ウズラは一口サイズなので喉に詰まらせないようにするにしても工夫のしようがない。家庭や学校で食べ方の指導を徹底してほしい。給食からウズラだけ排除すれば事故がなくなるという話ではない」と思いを明かす。 同社では8割が加工向け、2割がスーパーなどに卸す家庭向けで、事故の報道後に家庭向けの卵の売り上げが2割減ったという。今後、加工向けにも影響が出る可能性がある。 同店のウズラ卵をよく買うという男性は「家では串揚げにしてよく食べる。(食べるのを敬遠するのではなく)食事の指導、詰まらせた時の対処法の指導が必要」だと考える。 ウズラ卵の生産量・全国トップの愛知県豊橋市。「豊橋うずら」のブランドを持つ全国唯一のウズラ専門農協、豊橋養鶉(ようじゅん)農業協同組合は「給食用にウズラ卵を卸しているが、キャンセルなどは出ておらず、現時点で悪影響はない。今後の風評被害を懸念している」(総務部)とする。同市教育委員会は注意喚起をした上で、給食への提供を続ける方針だ。
農家応援したい 提供継続の声も
給食のウズラの卵を巡っては、2015年に大阪市の小学校で1年の女子児童がウズラの卵を喉に詰まらせて死亡した例がある。こうした事故を防ぐため文部科学省は給食時の注意点をまとめた指導手引書(19年改訂)を教育関係者向けに公表。①思いがけずのみ込む恐れのある丸い形状の物は十分な注意が必要②食べやすい大きさにして、よくかんで食べるよう指導する――などを求めていた。文科省は事故を受け、改めて手引を確認するよう各都道府県教委などに通知した。 給食提供の判断は各自治体によって分かれる。ただ、「事故が起きると何でもかんでもやめてしまおうとなりがちだが、それでは必要な教育効果が得られない」として継続の重要性を訴える首長もいる。 消費者からも「他の食材でも起こり得る。ウズラ卵が悪いわけではなく、私は農家を応援したい」(広島市の女性)などの声がある。
日本農業新聞