1ドル154円台の米ドル円…今週は「動くなら円高」といえる〈3つの要因〉【国際金融アナリストが考察】
米ドル/円の動きの手がかりとなる「テーマ」を検証
2)「トランプ・トレード」のポジション調整 トランプ氏の選挙公約を織り込む取引、「トランプ・トレード」は、為替市場においては米ドル買い・円売りポジション拡大をもたらしたとみられています。 ただそんな米ドル買い・円売りポジションは、米ドル高・円安に一巡感が出てきたことを受け、先週にかけて修正の兆しが出てきました。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋による円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)が19日現在で4.6万枚となり、1週間前の6.4万枚から縮小しました(図表5参照)。 例年、年末にかけてその年のトレード収益を確定するためにポジションの手仕舞いが続く傾向があります。その意味では、このまま「トランプ・トレード」の米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが続くようであれば、米ドル高・円安余地は限られ、米ドル安・円高リスクの拡大が注目されそうです。 3)ユーロ安・米ドル高が続くか ユーロ/米ドルは先週にかけて続落し、一時1.04米ドルを大きく割り込むなど2022年11月以来の水準まで下落しました。このような対ユーロでの米ドル高の動きがさらに続くようなら、それが対円にも波及、米ドル高・円安が再燃する要因になる可能性もあるでしょう。 ところで、このユーロ安・米ドル高の動きは、基本的には独米金利差の米ドル優位・ユーロ劣位の拡大に沿ったものです(図表6参照)。 そして、この金利差の「ユーロ劣位」の拡大を主導しているのは独金利の低下といえます(図表7参照)。独金利低下の背景は、12月のECB(欧州中央銀行)追加利下げ観測があります。 このようなECB利下げ観測を受けた独金利低下に伴う金利差の「ユーロ劣位」の拡大、それに連れる対ユーロでの米ドル高が続くかどうかは、米ドル高・円安再燃の観点からも注目されそうです。
今週の注目点=週後半は米感謝祭で薄商いも
今週は、28日が米国はサンクスギビングデー(感謝祭)。この日の経済指標の発表などはあるものの、年末に近いタイミングで、祝日と土曜日に挟まれ、個人消費が盛り上がりやすい翌日の「黒字の金曜日」といった意味の「ブラック・フライデー」に続くことで、とくに注目材料がなかった場合は、市場参加者が減ることで薄商い、すなわち小動きになる可能性があります。 そうではなくて、新たな方向感が出るなら、これまで見てきた3つのテーマに注目したいと思います。基本的には1)、2)は米ドル安要因、3)は米ドル高要因との位置付けになります。 個人的には、とくに1)、2)の影響に注目し、米ドル/円は上値が重く、新たな方向性が出るなら下落方向ではないかと考えているため、今週の予想レンジは151~156円で想定します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒
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