インタビュー:中小企業の資金需要拡大、価格転嫁の動きも=りそなHD社長
Anton Bridge [東京 2日 ロイター] - りそなホールディングスの南昌宏社長はロイターとのインタビューで、人件費や原材料費が上昇し、日本経済にインフレの兆しがみられる中、融資先の中小企業の間でデジタル化など効率化投資の資金重要が増加しつつあると明らかにした。中小企業がコスト上昇分を取引先に転嫁する動きも確認できるという。 首都圏や関西圏で地域密着型の事業を展開するりそなHDは、貸出先の8割が中小企業と個人が占める。多くが下請けの中小企業は値上げや賃上げで大企業に後れを取っており、物価上昇を上回って賃金が上がる「経済の好循環」を目指す日本政府・日銀の課題だった。 南氏は、これまでの流れに変化がみえると指摘。「穏やかなインフレを前提とする経済に適応していくことが、競争力を上げることにつながっていく。この過程の中で、中小企業は良い方向に向かっている」と語った。 りそなHDの中小企業向け融資残高は、9月末時点で前年同期比4.9%増加した。昨年9月までの1年間の増加ペース1.1%と比較しても顕著な伸びを示した。融資は新規の設備投資や、深刻化する人手不足を補完するためのデジタル化に活用されているという。 南氏は、材料費や人件費上昇分の価格転換も改善の動きがあると説明。「大企業は自社製品の価値に対して自信がある。一方で、過去30年間のデフレを経て、中小企業は値上げにより自分たちの商品が売れなくなるのではないかという思いを持っている」とした上で、適度なインフレ期待が定着するにつれて状況は変わりつつあると話した。 デフレからの完全脱却を目指す政府は、価格転嫁に対する中小企業の姿勢の変化が賃金上昇につながることを期待している。石破茂首相は先週、経済界・労働団体のトップが意見交換を行う政労使会議で、来年の春闘での大幅な賃上げを呼びかけた。 連合は10月、来年の春闘で中小企業に対し「6%以上」の賃上げを求める闘争方針を決めた。大企業に求めた「5%以上」を上回る水準で、格差を埋めたい考え。 *インタビューは11月21日に実施しました。 (Anton Bridge 記事執筆:浦中美穂 編集:久保信博)