人口減少の日本「地域に人、会社を分散する構造必要」 湯崎英彦広島県知事
昨秋公表された国勢調査の結果、日本の総人口が減少に転じた。人口減少時代の自治体をどう舵取りするか、きくため実施した首長インタビューで、広島県の湯崎英彦知事は、人口減少期も「日本がフロントランナー」を維持することが大事、と提言。そのためには、東京一極集中から、地域に人や会社を分散し、国内で多様化を図ることが「国の構造として非常に重要」と訴え、地方の自主性・分権の必要性や広域連携を重視する考えを示した。また、施策を通じ、ワーク・ライフ・バランスがとれた「新しい日本人が目指すべきライフスタイルを広島県で実現したい」と意欲をみせた。 (2017年1月取材)
“故郷で錦を織る”イメージ転換を図る
湯崎知事は、現在の広島県の人口減少の要因について、社会減では進学・就職期の東京圏を中心にした若者の転出、自然減では、親世代が減ったことによる少子化の進行がある、と説明。社会動態のプラスマイナスゼロと、2035年ごろの出生率2.07を目指した「ひろしま未来チャレンジビジョン」に沿って、UIJターンや働く女性のためのサポート等、総合的な取り組みを展開していると述べた。 また、それらの実現には「地域の魅力を高めることが重要」と、東京や海外へ出て大成してから故郷に戻るという“故郷に錦を飾る”という従来のイメージを転換させて、“故郷で錦を織る”「ひろしまブランド」の確立を目指したい、とし、具体的には、先端産業が集積していることを強みに、付加価値の高いクリエーティブな仕事が可能な「イノベーション立県」と、豊かな食や自然と都市が近いことを生かした、仕事も暮らしも両立できる「欲張りライフ」を推し進めていく、と話した。
高い付加価値を生む人材を地域に蓄積したい
ほかにも、子どもから大人まで、一貫した人づくりを狙いとした広島県独自の「学びの変革」を展開。「学びの変革」の象徴的学校として、2019年4月開校予定の全寮制・中高一貫のグローバルリーダー育成校(仮称)について、「旧制高校やイギリスのパブリックスクールみたいな人間力をつける学校」をイメージし、地域、国、世界が「フラット化」した今の社会の「どんな場面でも活躍できるリーダーをつくる」と、設置の狙いを説明した。加えてグローバルリーダー育成校の“前哨戦”として取り組んでいる高校生海外留学1万人プロジェクトも「自分の可能性を広げることは個人にとっても重要」、「広島とか地域にこだわってやることではないと思っている」と子どもたちのための新しい教育モデルをつくる意義を語った。 一方で、社会人らを対象にした大学院などで高度な教育を受けるための修学支援制度については、「活躍のステージとして広島県を選んでもらうことが目的」、「高い付加価値を生むことができる人材を地域に蓄積していくことが、地域の活力を高める要素」とプロフェッショナルな人材育成と確保に、今後も力を入れて取り組む姿勢をみせた。