護衛艦空撮で大騒ぎ…!自衛隊の脆弱性が露呈した「深刻な事実」と国土交通省によるドローン規制の盲点
事件を機に政治が説明すべきこととは
自衛隊幹部は「少なくとも平時において、Wi-Fiなどの周波数帯を遮断することは現実的ではない。それではどうするのかと問われれば、目視も難しいような小型ドローンへの対処は難しい」と打ち明ける。だが事件を機に「ドローンの形状や飛行特性などを認識し、ドローンが重要施設内に侵入すれば、瞬時に探知できるAI(人工知能)システムの配備や開発を急がなければならない」と話す。 この言葉を裏付けるように、今回は護衛艦「いずも」だけでなく、米海軍横須賀基地に停泊中の米空母「ロナルド・レーガン」の動画も撮影され、SNS上で拡散されている。「撮影者の本当の狙いは米空母の空撮で、『いずも』はおまけ」といった声も聞かれるが、基地内に入ることすら厳しい米軍基地でも小型ドローンへの対処は難しいということでもある。 こうした事実から私たちが認識すべきは、現時点でドローンを使った緊急事態や国家危機が発生すれば、直ちにWi-Fiなどの周波数帯は遮断され、日常生活に大きな支障が出ることを認識し、理解する必要があるということだ。事件を機に、防衛相や防衛副大臣が国民に向かって説明すべきは、そうした厳しい現実ではないのか。
ドローン規制の盲点
二つ目は、ドローン規制など現行法をめぐる問題だ。政府は離島間の物資輸送などドローンの利活用を目的に航空法を改正、2022年6月から、機体重量100グラム以上のドローンの機体登録を義務化し、100グラム以上のドローンを屋外で飛行させる場合には、所管する国土交通省に機体登録しなければならないと定めている。実際に飛行させるには、「無人航空機飛行禁止エリア」の地図で飛行経路を確認し、もし禁止エリア内を飛行せざるを得ない場合には、同省にその旨を申請し、許可を得なければならない。 だが、ドローンなどの運用に詳しい専門家は「規制には大きな盲点がある」と指摘する。それは「国土交通省がドローンを100グラム以上と未満で、登録義務の有無を分けてしまったことだ」と説明する。手のひらサイズと言われる小型ドローンは、個々人の趣味で使う“おもちゃ”として普及してきたというのがその理由でもあるようだが、その結果、登録が義務化されて以降、東京・秋葉原やネット上では、中国製とみられる100グラム未満の小型ドローンが次々に登場、しかも2~3万円程度の安価なものが数多く販売されている。 この専門家は「護衛艦を撮影したのも、カメラ付きで100グラム未満の機体だと思う。見通しの良い場所であれば、往復3キロ程度の飛行は可能だ。今の規制はドローンを悪用する抜け道となっている」と話す。そもそもドローンは、2015年に起きた首相官邸に無人機が落下した事件を機に規制が始まっており、今回の空撮事件のように、今後も悪意を持った違法行為の頻発が予測される以上、航空法の見直しは必須だと思う。