害虫イネカメムシ早くも大発生 稲の穂が出る前なのに…
「うちの田んぼも大変です」。近年、発生が増えているイネカメムシの越冬地を探った本紙「農家の特報班」の記事を読み、群馬県の水稲農家の50代男性から、イネカメムシの情報が届いた。主に出穂期に飛来するとみられていたが、農家から提供された写真には、出穂期前の青い稲の葉に、同害虫が多数付いていた。 「イネカメムシを見たのは初めて。数が多く、鳥肌が立った」。男性はそう振り返る。 複数品種を栽培する1・4ヘクタールのうち、最も出穂が早い「ミルキークイーン」で集中的に発生していたという。 見つけたのは7月3日。「出穂していないのになぜ?」と疑問を抱き、本紙「農家の特報班」のLINEに送ったという。初めての状態に不安を覚え、農薬メーカーに相談。産卵の可能性があるとして農薬を散布し、全て駆除した。 出穂期はおおむね7月下旬ごろを見込む。「既にこれだけ出ている。出穂期はどうなってしまうのか」と不安を拭えずにいる。 農家の許可を得て、長年イネカメムシを研究してきた元龍谷大学教授の樋口博也氏に、写真を見てもらった。 樋口氏は「イネカメムシだ」とした上で「出穂前に飛来することはある。だが、こんなに多数発生しているのは見たことがない」と、異例の状態だと指摘。「成虫前の姿も見られる。ここで羽化した可能性がある」とみる。 農研機構にも写真を提供したところ、「イネカメムシで間違いない」との返答が来た。同害虫を含むカメムシ類は出穂前であっても、まとまった数が確認されたら、「出穂直後から被害を受ける恐れがあるため出穂期前でも防除が必要」(病害虫防除支援技術グループ)とする。 同害虫は穂を吸汁して不稔(ふねん)や斑点米をもたらす。出穂前にもかかわらず飛来してきた背景として、同機構で同害虫の研究に携わる石島力上級研究員は「出穂を迎える稲から出る物質に誘引されている可能性がある」と推察。稲が発する香ばしい匂いのもととなる物質との関係を疑う。(高内杏奈)
<ことば> イネカメムシ
1970年代後半以降、ほとんど確認されていなかったが、2020年ごろから関東以西で発生と被害が見られるようになった。成虫は茶褐色で体長12、13ミリの大型の斑点米カメムシ類。成虫で越冬する。
日本農業新聞