異物混入を考える ── 本当に増えている? 企業はどう対応すべき? 奈良県立医科大学教授・今村知明
食品への異物混入問題における企業の対応はどうあるべきか
企業は、たとえば金属探知機の導入やX線での透視による検品の充実など、異物混入を防ぐための最大限の予防策を企業は講じる努力が必要です。それでも100%混入を防ぐのは難しいのが現実です。たとえば原材料の野菜の葉を一枚一枚めくって虫がついていないか調べることは不可能です。まして町の漬物店などの個人経営の食品企業ではそのような設備投資さえままならないと思います。 大切なのは異物混入が起こったときの対応です。苦情があった際、企業は十分に対策を取ったとしても異物混入は起こりうるものだとの前提に立って、消費者への丁寧な対応を心がけることが必要です。また今のように、社会的に異物混入が注目されている場合には、消費者へ情報を小出しにせずに、まずは異物混入の苦情件数が合計でどの程度あるのかなどの全体像を示して説明した方が説得力があると思います。 先にも述べたように、企業側もすべての場合で全品回収するなどの過剰反応をせずに冷静な対応をしなくてはなりません。ただし、健康被害や故意による混入のケースについては企業は直ちに公表し、回収や再発防止に尽力すべきです。いずれにせよ、異物苦情は消費者からの商品の最終チェックだと捉え、企業には改善の機会として取り組んでいただきたいと思います。 最後に、店頭で故意に異物を商品に混入させるネット動画について最近ニュースで報じられています。故意に異物を混入させるのは犯罪です。このような行為は決して許されるものではありません。 ---------------- 今村知明(いまむら・ともあき) 奈良県立医科大学健康政策医学講座教授。 健康危機管理、食品保健、公衆衛生、健康政策を研究している。 2014 年2月~5月、アクリフーズ「農薬混入事件に関する第三者検証委員会」委員長を務めた。