日銀・黒田総裁会見12月19日(全文1)緩和を意識した政策運営が適当
注意が必要な情勢になっているのか
NHK:NHKの【オオクボ 00:17:29】と申します。よろしくお願いします。今の話に若干、関連するんですけれども、総裁はかねてから政策運営に当たってはコストとベネフィットを比較しながら決めていくというふうにおっしゃっております。昨今、手数料を設けるというふうな話もありますが、地方銀行の経営状況を見てみますとやっぱり中間決算でも減益のある金融機関が多かった。あるいは年金運用にしても予定利率を見直して事実上、【ゲンカク 00:18:03】になるような制度変更をするような企業さんも出てきております。ベネフィットを上回るような、そんなコストになってることはないから現状維持してるんだとは思うんですけれども、そのコストを見てみますと今のところやはりちょっと以前よりも増えつつある、あるいは注意が必要な情勢になっているというふうにお思いでしょうか、いかがでしょうか。 黒田:その点は私どもも十分認識しておりまして、ご承知のように例の総括的検証で、イールドカーブコントロールを導入した際にも申し上げたように、内需を刺激する効果っていうのは短中期の金利引き下げっていうのは非常に効果があるわけですけど、特に超長期の、20年30年40年っていったところの金利の引き下げっていうのはむしろ年金とか生命保険の運用の利回りの低下を通じて消費者に、消費者のマインドにマイナスの影響を与える恐れがあるということで、金融緩和は必要な限り続けるわけですけれども、その場合にもそういった副作用には十分注意しないといけないっていうことでイールドカーブコントロールを導入して、適切なイールドカーブを形成するということをしてきたわけですので、そういった意味ではコストという面にも十分配慮していく必要があるし、配慮してきてると思いますし、今後もさらにそういう必要性は高まっていく可能性があると思っております。
金融緩和の効果が損なわれないよう留意が必要
また金融機関に対する影響っていう意味では、常に金融システムレポートでも書いておりますとおり、低金利状況は続くっていう中で金融機関の収益にマイナスの影響を与える可能性があるということで、ただ一方で地域における人口減とか企業数の減少ということもあって、やや構造的にいわゆる業務、貸出業務に基づく収益が低下してきてるトレンドもあるわけですね。今の低金利状況だけでなく、そういう構造問題もあってそういう影響が出てる、そういう中で確かに低金利環境が長く続くと金融機関の収益にマイナスの影響が出てくる可能性があるわけですし、そうなった場合に一方で金融仲介機能が損なわれるってことになると、これはまさに金融緩和の効果が損なわれることになりますので、そうならないように留意する必要がありますし。 他方でまたそういう下で過剰なリスクを取って、その結果として金融機関にダメージが生ずれば、またこれも金融仲介機能が損なわれることにもなりますので、そういった低金利環境が続く下での金融機関への影響というものも十分注視していかなければならないし、注視してるわけであります。 特にここ6~7年、比較的、地域の金融機関も英語でいうとrespectableっていうんでしょうか、相応の収益、利益水準を保ってきたんですけども、それは業務純益っていうか貸し出しに基づく通常の銀行、金融機関のビジネスの利益がずっと減ってきて、それをちょうど株式とか債券の売却益と、それから信用コストの低下っていうことでちょうど埋め合わされてきて、非常にある意味での収益水準を保ってる、純益が保たれてきたんですけども、今後ともそうたくさんキャピタルゲイン、益出しができるようなものがあるわけではないでしょうし。それから信用コストもここまでくると若干、底打ちというか反転の兆しもありますので、ますますこういった金融機関への影響、金融緩和、低金利環境が長続きすることの副作用っていうものに十分注意していく必要があるということは私ども前から言っておるとおりで。ただ現時点でそういった信用仲介機能が損なわれているかっていわれると、ご承知のように金融機関の融資は比較的2%台の半ばぐらいで続いておりますし、それからヒートマップをご覧になっていただいても何か赤信号がいっぱいついてるっていうこともありませんので、信用仲介機能が衰えるっていうことにもなってないし、過剰なリスクを取って何かいき過ぎになってるっていうことも今のところはありませんので、ただちにどうってことではないんですけども、やはり注意していく必要はあるということはそのとおりだと思ってます。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見12月19日 全文2へ続く