「広島城が閉まる?」 老朽化による雨漏り、耐震問題… 約43万人が訪れる観光資源に“木造復元”の可能性
木造復元できる城は全国わずか
一方、老朽化した天守閣そのものについて、広島市は2つの案を検討している。 一つは「耐震工事」。工事にかかる費用は1.4億円~9.8億円、工期は長くても6年と“短く済む”メリットがあるが、あくまで延命措置なので老朽化は解決しない。30年ほどで建物の寿命がくると考えられている。 もう一つは「木造で復元」する案である。復元には2020年の試算で約86億円かかると言われていて、完成までに数十年という長い期間を要する。膨大な費用と時間が必要になるが、「木造」以外での復元はあり得ない。文化庁は2020年に、史跡における歴史的建造物の復元に関する新たな基準を設け、「当時の規模や外観を忠実に再現できる“根拠”を持ったものでないと復元を認めない」という方針だ。根拠となる資料や図面、写真が残っていることが重要で、全国に100あるとされる城のうち木造復元が可能な城はごくわずかと言われている。 広島城は原爆で倒壊する1945年まで建っていたため写真が存在し、運良く詳細な図面も残されている。当時の姿を再現できる可能性を持つ貴重な城なのだ。 その広島城の未来を小林主幹学芸員は「木造復元にかじを切ると、かなり調査期間が必要で天守閣にのぼれない期間が長くなります。一方、耐震工事の場合は短期間の休館で済むメリットがありますね。ただ“木造だけど新しい城”という方が観光の起爆剤になるかなと。しかも日本全国すべての城が木造復元できるわけではない。広島城は木造復元できる城の一つですから価値は大きいと思います」と話す。 今のままの天守閣で耐震化を進め「観光資源」として使い続けるのか、木造復元し新たな「文化的価値」をつくり出していくのか。“広島城の未来”を考える必要がある。 (テレビ新広島)
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