水の確保が最大の課題 能登地震を語り継ぐ【山口】
珠洲で活動の山大学術研究員・網木さん
9月20、21日に地震の爪痕が残る能登半島を襲った豪雨は、死者14人、建物全壊16棟、床上浸水318棟、床下浸水1055棟と甚大な被害をもたらした。山口大大学院創成科学研究科同大地域レジリエンス研究センター学術研究員、網木政江さん(55)は、9月に続き10月14~18日、石川県珠洲市で支援活動を行った。「1カ月前とは全く様子が変わっていた。元日の震災直後よりひどい状況になった場所もある」と現状を語る。
豪雨で状況悪化、健康状態も懸念
現地は道路が寸断され、いまだに山から水が流れて浸水する箇所があり、砂ぼこりが舞う。堆積した土砂や応急復旧で積まれた大型土のうから災害の大きさを感じたという。連日、行方不明者を探す消防隊の姿も見られた。 網木さんは前回に続き、珠洲市の大谷小中学校体育館の避難所に入った。同所は豪雨で浸水し、崖の近くにあるため泥や砂の影響が大きかった。最大の課題は水の確保。浄水場が使えず、地区全体で断続的な断水が発生。飲料用に週3回各3㌧が給水されても水不足の懸念は消えない。生活用水は川から取水しているが、流入した泥の影響で水量が減少しているようだった。 近接する馬緤(まつなぎ)町を訪れた時、在宅避難者の70歳代女性が水の確保に苦慮するのを見た。おぼつかない足取りでつえを突き、カートを押して湧水所でポリタンクに水をくみ、生活用水を確保していた。 応急仮設住宅の完成は12月下旬まで遅れ、避難所や被災した家屋で暮らすことを余儀なくされた人たちもおり、やり切れない思いを抱えている。特に地区のコミュニティー協議会の役員などリーダー的存在の人々の疲労感は大きい。「行政も復興に向けて全力で当たっていると分かってはいるものの、業者の派遣を増やすなどもっと他によい復旧方法があるのではないかといら立ちを見せる人々もいた」と話す。 山林や国道249号の復旧も不透明な中、冬が近づき、避難者の健康状態が悪化するのを懸念する。冬物の衣類や布団の支給を行ったが、今後もニーズを判断し、支援を継続することが重要だという。 昨年6、7月に山口、美祢市で大きな被害があった豪雨災害を念頭に、能登半島の被害は人ごとではないと訴える。「線状降水帯による土砂災害の発生で集落が孤立する事態は県内でも起こり得る。能登がどんな被害を受け、どんな問題を抱えているかを知ってほしいし、現地を見てきたものとして伝えていきたい」と力を込めた。