OpenAI社 サム・アルトマン氏復帰から考える「AIはどこまで規制すべきか問題」…組織・国で揉めてしまう“厄介すぎる構造”とは?
8日、チャットGPTを開発したOpenAI社のサム・アルトマン氏が取締役会に復帰した。 【映像】OpenAI社の“お家騒動”とは? 解任当時は700人を超えるOpenAI社の従業員が退社の意向を示したことも話題になったが、そもそもなぜサム・アルトマン氏は解任され、この度復帰することになったのか? アイデアの価値を数値化する技術を開発したVISIT Technologies株式会社CEOの松本勝氏に聞いた。 ━━サム・アルトマン氏は解任の背景は? 「簡単に言うと、会社の中におけるお家騒動だ。共同創業者である イリヤ・サツキバー氏というデータサイエンスチームのトップが他の取締役を巻き込んでクーデタを起こしたのだ。イリヤ氏は『AIが思ってる以上に早く進化しているから、少し開発のスピードを遅らせてちゃんとコントロールできるようにしないと人間に危機を及ぼす危険性がある』という考え方。対してアルトマン氏は『既にチャットGPTを世に出した以上、競争が始まっている。その中で自分たちがスピードを落としたら負けるだけだ』という主張。倫理優先VSビジネス優先という戦いがあったのだ」
━━安全性の確保は今後ずっと付きまとう問題になるのか? 「その通りだ。EUではAIの開発や利用を巡る世界初の規制法が承認されたが、当初はフランスが反対していた。規制をすると競争力を失ってしまうという議論は組織のみならず国同士の中でも戦いがある」 ━━具体的にAIにはどのような危険性があるのか? 「例えば、フェイクニュースやディープフェイクなどで簡単に人を騙せてしまう。うまく情報を操作すれば人を洗脳できてしまうため、場合によってはカルト集団的にテロを起こすようなことも不可能ではない。悪意を持ってAIを使う人が世界中に出てきてしまうと様々な危機が起こり得る」 ━━となるとEUのように規制ルールや包括的な仕組みが必要になってくるが、世界的なコンセンサスを得ることはできるのか? 「AIに大きな先行投資を行なった国からすると、わざわざ自分たちで規制してスピードを緩めるメリットは何もない。各国の利害がバラバラであるため世界同一のルールを設け、浸透させることは非常に難しいだろう」 「例えばヨーロッパでは経済的に裕福であることよりも人権や人生における豊かさを求める思考があるが、アメリカは強い企業を作り、世界に対して影響力を高めてきた成功体験があるため、AIという次の大きなビジネスの種に対しても全力で世界のトップを走ろうとするだろう」 ━━日本のAI開発における課題は? 「日本もけっしてAI開発で遅れたわけではないが、規制をきつくしがちだ。例えばアメリカでは自動運転にしても『とりあえず走らせてみて問題があったら規制すればいい』という考え方だが日本はやる前にあらゆるリスクを想定し、潰してからとなるためどうしても遅れてしまう。日本もバランスを取っていかなければ、ビジネスにおいてはどんどん遅れてしまうリスクがある」 ━━日本はもう既のAI競争において致命的に遅れているのか? 「いわゆる大規模言語という生成AIの要素技術の開発領域では既に難しい。だが、その要素技術を使ってどんなサービスを作って世の中に出していくかというステージではまだまだ勝てる可能性がある」 (『ABEMAヒルズ』より)