もしも認知症介護中に、殺意を感じてしまったら?
「褒める」という最強の薬
私は「褒める」を多用する介護をしています。亡くなった祖母は認知症テストで5点(30点満点)しか取れないほど進行していましたが、褒めると喜んでくれました。 「90歳なのに、肌白いね」、「20歳と間違われるでしょ?」 病院と自宅を間違い、いまは何月で季節感も分からないベッドで寝たきりの祖母でも、うれしそうに笑っていました。褒めたことを理解していたのです。2年間デイサービスに行きたくない! と拒否しつづけた認知症の母(要介護1・72歳)を動かしたのも、褒めることでした。 何度も注意し、責め続けた介護者が急に「褒める」のは難しい、いまさらできないという方がいました。しかし「褒めること」で自分がラクになるのなら、実践できるのではないでしょうか? 「褒めることは最強の薬」と言ったお医者さまもいます。
他人に頼れることは頼ってもOK 「しれっと」なんとかなるさ!介護を目指しましょう
認知症介護者による殺人事件のニュースを見ると、悲しい気持ちになるのと同時に「私も一歩間違えば……」という気持ちになりませんか? 一生懸命介護をして燃え尽き症候群になる、人に頼らず孤立してしまう、知らないうちに介護うつを発症する、そして人を殺めてしまう……。 おそろしいことも、こうやって文字すると冷静になれます。燃え尽きないように人に頼り、介護サービスを利用して介護をラクにする方法を考えればいいと理解できます。私は「しれっと」介護することを意識づけています。介護を頑張り過ぎず、すぐ人に頼る、燃え尽き症候群にならないよう、淡々と介護と向き合うためです。 名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生は、「介護者保護主義」というコトバを提唱しています。患者と介護者のどちらかしか救えないときは、介護者を救うという意味です。介護者が倒れてしまっては、認知症のご本人もかわいそうです。 昨年10月に発売した自著『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』(廣済堂出版・健康人新書)」には、この内容をより詳しく書きました。どうやってラクな介護を目指してきたか、すべて実践してきたものです。もしよろしければ、書店で手にとって頂けるとうれしいです。 5回に渡って、遠距離介護と認知症介護のお話をしてきました。最後まで読んで頂いてありがとうございます。「なんとかなるさ!」といつも言える介護者を目指して、今後も遠距離介護を続けていきます。 今日もしれっと、しれっと。 (介護ブログ「40歳からの遠距離介護 」運営・工藤広伸【くどひろ】)