勝敗くっきりの「AI半導体市場競争」第1ラウンド…エヌビディア、TSMC、SKハイニックスはなぜ勝者になれたのか?
(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長) ■ AI半導体の勝者と敗者 「主な半導体メーカーの四半期の売上高推移」など本記事の図を見る 2022年11月30日に米OpenAIがChatGPTを公開してから2年が経過した。この2年間で、さまざまな生成AIが開発され、世の中はAIブーム一色になった。 生成AIは、AI半導体を搭載したサーバー上で動作する。そのAI半導体を巡って多くの半導体メーカーが競争繰り広げているが、勝者と敗者が明確になっている(図1)。 【本記事は多数の図版を掲載しています。配信先で図版が表示されていない場合はJBpressのサイトでご覧ください。】 まず、設計においては、AI半導体の世界シェア約80~90%を独占する設計専門のファブレス、米エヌビディア(NVIDIA)一強となり、プロセッサメーカーの米インテル(Intel)や米AMDは苦戦を強いられている。 次に、エヌビディアのGPU(Graphics Processing Unit)などのAI半導体の製造においては、ウエハにチップをつくり込む前工程も、チップを切り出してパッケージングする後工程も、全て行っているファウンドリーの世界最大手、台湾TSMCが、これまた市場を独占している。 さらに、エヌビディアのGPUなどのAI半導体には、DRAMを縦に積層した広帯域メモリ(High Bandwidth Memory、HBM)を多数搭載するが、この分野では、DRAMの世界シェア1位の韓国サムスン(Samsung)ではなく、同シェア2位の韓国SKハイニックス(SK hynix)が先端HBMの市場を独占している。 要するに、AI半導体を巡る競争の第1ラウンドにおいては、エヌビディア、TSMC、SKハイニックスが勝者となった。以下では、その詳細を論じたい。
■ 半導体メーカーの売上高ランキング 図2に、主な半導体メーカーの四半期の売上高推移を示す。 2017年前半までは、インテルが1位だった。ところが2018年のメモリバブルの際に、サムスンがインテルを抜いて初めて世界1位になった。そのメモリバブルは2019年に崩壊し、インテルが首位を奪還した。さらに、2021年から2022年のコロナ特需では、再びサムスンが1位となった。その特需は2023年にかけて終焉し、サムスンおよびインテルに代わって、TSMCが1位に躍り出た。 そして、2022年11月30日にChatGPTが公開された後、2023年初旬からエヌビディアが急激に売上高を増大させ、TSMC、インテル、サムスンをごぼう抜きにして、圧倒的な1位となった。 ここで、TSMCとサムスンは、コロナ特需終焉による不況から脱して(エヌビディアほどではないものの)売上高を増大させている。しかし、インテルは不調が続いており、2024年第3四半期(Q3)の売上高が133億ドルしかなく、Q4にはHBMが好調なSKハイニックスに追いつき追い越されそうな状況である。 それにしても、エヌビディアの快進撃はすさまじい。主な半導体メーカーの売上高の年次推移を見てみると、予測値ではあるがエヌビディアは史上初めて1000億ドルを超える半導体メーカーになることは間違いない(図3)。 それでは、なぜ、エヌビディアの売上高が急増したのか。