U-23日本代表、“リベンジ”成功の理由。マリにとっての予想外、崩壊は起こらなかった【西部の目/パリ五輪】
U-23日本代表は現地時間27日、パリ五輪(パリオリンピック)2024・男子サッカー競技のグループリーグ第2節でマリ代表と対戦し、1-0で勝利。この結果、1試合を残してグループリーグ突破を決めた。今年3月の親善試合で1-3の敗北を喫した相手にリベンジできた理由とは。(文:西部謙司) 【グループリーグ順位表】パリ五輪 男子サッカー
脅威だった「リーチ・高さ・懐」
U-23マリ代表には、3月の強化試合で完敗を喫していた。特有のリーチの長さ、ドリブルの懐の深さ、セットプレーでの高さは今回も脅威だったが、U-23日本代表はあのときよりも格段に対応できていて、今回は接戦に持ち込めていた。 81分に山本理仁のゴールで先制。ロスタイムにPKをチェキナ・ドゥンビアが外す。際どい勝負だったのは間違いなく、むしろマリの方がやや優勢だった。ただ、日本はもともと接戦を前提とした戦い方であり、このチームらしい勝利でもあった。 初戦から先発を3人代えている。2得点の三戸舜介ではなく荒木遼太郎を先発起用。初戦で、負傷した平河悠に代わって出場し2ゴールをあげた藤尾翔太もベンチに置いて山田楓喜。CBも木村誠二ではなく西尾隆矢。選手のクオリティが均質化していて連係しやすく、総力戦向きという日本らしさが出ている。中2日の試合が続く過密日程はすでにアジア予選で経験ずみ。藤尾、三戸は57分から登場。佐藤恵允も69分に投入。最後まで強度を落とさずにプレーできた。 ただし、日本の守備強度が優位だったのは立ち上がりの10分間程度だけだ。その後は押し込まれている。
マリは不気味だった
マリの選手たちは保持したときに、あまりボールを晒さない。通常より少し、日本選手からボールが遠い懐の深い持ち方をする。そのために迂闊に足は出せず、このキープ力によって押し込まれていく流れに。CKでは高さの優位性も出してきた。 一方、マリは高い位置からのプレスはしてこない。ミドルゾーンから捕まえていく形。とくに藤田譲瑠チマへの警戒は強く、オーバーエイジの10番サラム・ジドゥをマンツーマンでつけていた。押し込めてもいったんは引く。藤田を経由させない。ボールを持たせて、引っかけてカウンターを狙う。3月に快勝した相手に対して油断なく対応していて、その慎重さが不気味でもあった。 28分に藤田がジドゥへのタックルでイエローカード。斉藤光毅のドリブル、キープからのチャンスはあったが、どちらかと言えばマリのペースで試合が進んでいた。 ところが、35分あたりからマリの藤田へのマークが急に曖昧になる。ずっとマークしていたジドゥが藤田を離し、ブバカル・トラオレがつくように。しかし、それもはっきりしないまま、日本は藤田からのパスで立て続けにチャンスを作ることができた。 マリのMFは担当ゾーンに入って来た相手をマークし、そのまま受け渡さずに守る。それだけにマークが曖昧になると傷口になりやすく、綿密なようでいてところどころ穴も見え始めていた。 中盤でゲームを作るはずのジドゥが藤田のマークでエネルギーを使いすぎて攻撃にあまり絡めず、それで一時的にマーク相手を変えたのかもしれない。日本にとっては少し相手のガードが下がった感があった。 ただ、後半もやや優勢だったのはマリ。前半は左ウイングだったティエモコ・ディアラを右へスイッチ。日本にとって最も脅威だったディアラが右へ来たことで、マリにとって脅威だった斉藤が守備に下がるようになった。ここは綱引きになるが、保持で優勢だったマリが一石二鳥を狙ったものと思われる。