正月おせちを直撃 値上げの波 新たな不安の種も【WBS】
3万2395品目。これは何の数字かといいますと今年、値上げされた食品の数です。調査会社の帝国データバンクが11月30日に発表したもので、去年のおよそ2万5000品目から大幅に増えました。値上げの波はお正月に欠かせないおせちにも直撃していて、さらにいま、新たな不安の種も生まれています。 ローソンストア100が11月30日に開いたおせちの発表会。100円の商品を中心に販売するコンビニチェーンですが、今年はある異変が。 「今年は今まで人気の100円シリーズに、150円シリーズを仲間入りさせます」(「ローソンストア100」商品開発本部の近藤正巳本部長) 発売から12年、累計1500万食を売り上げている人気シリーズの100円おせち。黒豆や数の子といったおせちの定番から、のどぐろのかまぼこなど31種類が税抜き100円で販売されます。一方、今年初めて登場した150円おせちでは、去年まで100円で販売していたあさりの佃煮やえび甘露煮は内容量を10グラム増やして150円に値上げしました。 「燃料費が上がったので、物流費の高騰も続いていた。人手不足というところも原因になっている」(近藤本部長) 100円で販売する商品にも変化が出ています。定番のかまぼこは去年120グラムだったものが、今年は85グラムに。内容量を減らすことで価格を維持しつつも、タイの身を混ぜることで、付加価値を付ける工夫もしています。 今回初めてとなる100円おせちの価格改定。苦渋の決断だったといいます。 「全品を逆に200円にという議論もあったが、なんとか150円で抑えられた。全体的に厳しい物価高はあるが150円であれば、客が満足するだろうというところが一番のポイント」(近藤本部長)
鳥インフルエンザ発生で卵の価格は?
年末年始を襲う値上げの波。そこへさらに追い打ちをかけるのは、鳥インフルエンザの発生です。11月25日、佐賀県の養鶏場で今シーズン最初の感染が確認されると、27日には茨城県。そして30日、埼玉県で今シーズン3例目の感染が確認されました。 今後、鳥インフルの感染が拡大した場合、懸念されるのが卵の価格の上昇です。鳥インフルが全国的に流行した昨シーズンは卵の出荷数が減少し、1キロ350円まで価格が上昇。「エッグショック」と呼ばれました。価格はその後、落ち着きましたが、今後の感染状況次第では「エッグショック」が再び訪れる恐れがあります。 鳥インフルの拡大に懸念を示すのが、洋菓子店です。東京・練馬区にある「パティスリープラネッツ大泉学園本店」では1日20キロの卵を使うといいます。 「先月から卵の値段が上がってきている。去年の4月から比べると約1.75倍」(「パティスリープラネッツ」の山本光二社長) キャラメルムースのケーキや、チョコレートクリームのケーキなど、どのケーキにも卵がふんだんに使われています。これから迎えるクリスマスシーズンは卵の使用量が1年で最も多い時期です。 「これからクリスマスなのでスポンジが多くなる。卵の使用量は普段は月に約300キロだが、12月だと400キロになる」(山本社長) この店では鳥インフル対策として、栃木や青森など複数の地域から卵を仕入れ、リスクを分散しているといいます。しかし鳥インフルが各地で流行すれば、その効果もなくなり、卵は入手困難に。仕入れ価格も高騰します。商品への価格転嫁はできないのでしょうか? 「卵だけでなく全てのものが値上がりしているので、商品の価格に転嫁するわけにはいかない。そこは泣く泣く。ギリギリのラインでやっていく」(山本社長) 物価の優等生と呼ばれた卵に迫る鳥インフルの危機。国内の養鶏場で鳥インフルが発生するのは、これで4年連続です。なぜ毎年発生するようになったのでしょうか? 鳥インフルエンザに詳しい北海道大学獣医学研究院の迫田義博教授は「4年連続して渡り鳥がウイルスを海を越えてシベリアなどから運んでくる。それが養鶏場での4年連続発生の原因」と説明します。 ウイルスの運び役となっているのが鴨や白鳥といった渡り鳥です。夏をシベリアで過ごし、秋になると日本へ渡ってきます。実はここ数年、シベリアに鳥インフルのウイルスが定着していることが判明。シベリアで感染した渡り鳥が日本に南下することで、鶏への感染が発生しているのです。対策はあるのでしょうか? 迫田教授は「これまで集約していた養鶏をある程度分散していくことも必要」と話す一方、この対策には課題もあるといいます。 「被害を減らすには、生産者はプラスアルファの投資をしないといけない。投資が必要なため卵の価格が5年前、10年前(の水準)に戻るのはなかなか難しい」(迫田教授) ※ワールドビジネスサテライト