香港デモはなぜここまで長期化したのか? 立教大学准教授・倉田徹
■統一されていないデモ隊
第三の原因は、デモ隊の側にも組織がなく、全体の戦略が統一されていないことです。占拠行動を最初に提案したのは学者のグループであり、その後主力となったのは学生団体でしたが、インターネットのSNSなどで友人に呼びかけられて参加した者が多数を占める状況のなか、デモ全体を指導して撤退を決めることができる者は誰もいないという状態になっています。デモの指導者は自首することも計画しており、幕引きのしかたを模索していますが、彼らが妥協や撤退を言い出すと強硬派から批判される状態にあり、民主派や学生リーダーの対応は二転三転しており、政府も交渉不能となっています。 そうは言っても、デモ隊はすでに長期戦に疲れを蓄積させていますし、市民の関心が薄れ、デモへの反感が高まる傾向は続いています。政府は少しずつ強制排除を行い、「占拠区」を狭めていって、様子を見ていずれは最終解決を図ると考えられますが、このまま終わればデモ隊側の主張は何一つ実現しなかったことになり、デモ隊や多くの市民に不満を残したまま政治が展開されて行くことになります。これを受けて北京が対香港政策をどのように調整するのか、香港社会の急速な「中国化」や民主化の遅れへの不満に対し、何らかの緩和策をとるのか、それともさらに強硬な手段で抑えつけるのか、「占拠」の終了後の動向にも注目する必要があります。