変わる医療制度、課題は何?/社会保障改革のざっくり解説
医療や介護、年金などの社会保障制度をよくすることを目指し、政府の「国民会議」がこのほど報告書をまとめました。この報告書に基づいて法案がつくられます。高所得者には負担増を求め、低所得者の負担は軽減するという方針ですが、何が変わり、どんな課題があるのでしょうか。まず医療分野についてざっくり解説します。
70~74歳の窓口負担が増加
医療分野について、報告書にはおもに次のような内容が示されています。 まず、現状では70~74歳の医療費窓口負担が1割に据え置かれていますが、今後(早ければ来年4月から)、新たに70歳になる人から段階的に本来の2割にすることが求められています。その結果、70~74歳の1人当たりの平均自己負担は現在の年4万5000円から7万4000円に跳ね上がります(数字は8月7日付MNS産経ニュースより)。 さらに高額な医療費がかかった人の自己負担を低く抑える「高額療養費制度」も変わる予定です。2014年度の開始が想定されており、高所得者の負担は増えますが、低所得者の負担は軽減されます。70歳未満の年収300万円以下の世帯で、上限を現行の月約8万円から約4万円に下げる案が浮上しているそうです。 このほか、現状では軽い病気でも高度な設備を備える大病院を利用する患者が多く、給付費がかさんでいるため、紹介状のない患者が大病院を受診した際は定額負担を求めるようなしくみを検討する、という内容が盛り込まれています。
大企業の健保に負担を強いる
こうした医療や介護、年金などの社会保障は、税金や保険料による給付費が支えています。しかし給付費は2025年には約150兆円(GDP比約24%)に上るといわれており、社会保障費増に対応するために消費税も現行の5%から10%まで段階的に引き上げても、給付の伸びに追いつかないといわれています。 そこで報告書では、低所得者が多く加入する国民健康保険の運営を、現行の市町村から都道府県へ移し、財政基盤を強化する内容が盛り込まれました。 また、75歳以上の高齢者医療向けの支援金が膨らみ続けているため、「総報酬割」を平成27年から全面導入する方針を示しています。これは、高収入の大企業社員が加入する健康保険組合ほど、高齢者医療向けの支援金負担を大きくするというものです。 ただ、こうした方針に対しては、「財政悪化の尻ぬぐいを大企業とその従業員に強いる構図も一段と強まっている」(8/14付、日本経済新聞)との指摘もなされています。 ※この記事は「社会保障改革のざっくり解説」シリーズの1回目です。同シリーズの記事は下の関連記事リンクからどうぞ。