阪神の初紅白戦で見えたものは?
投手陣でアピールに成功したのは、高卒2年目の西と、中日を戦力外になりトライアウトを経て阪神と育成契約を結んだ2013年のドラフト1位、鈴木の2人だ。昨年まで2軍チーフコーチだった高代氏は、2人をよく知っている。 「西は投球フォームが落ち着いた。首をふって帽子が飛ぶこともなくなったし、昨年の春先は137キロ前後しか出ていなかったストレートが145キロまで伸び始めた。担ぐように投げて、ヒジがうまく使えていなかったのだが、その部分も修正されていた。右打者へのシュート回転のボールもなかった。先発タイプだけに先を見据えて育成すべきだが、今キャンプでどこまで結果を出し続けることができるかに集中すればいい。ただまだ見るべきボールを持てていない。素材をどこまで伸ばすことができるか」 西の特長は、メジャーリーグの前田健太を真似たというフォームから投げ下ろす角度のあるボール。大山から145キロのストレートで三振を奪い、同期の井上も外角低めのストレートで見逃しの三振に斬って取り、2安打2三振で無失点にまとめた。 鈴木も2イニングをパーフェクト。中日時代は血行障害に苦しみ、まだストレートは130キロ後半だが、梅野から見逃しの三振を奪ったカットボールは魅力的だった。 高代氏は「去年もファームで対戦したが、後半あたりからボールが戻り復調の兆しがあった。彼はセンスがあるし、まだ球速は出ていなかったが腕を振れているから凡退を奪えている。阪神は、いい選手に目を付けた」と期待を寄せる。 一方で課題の守備面ではまたミスが生まれた。 3回一死三塁。佐藤の打席で三塁走者の坂本が飛び出したのを見て梅野が三塁へ送球したが、カバーに入った大山がタッチを急ぎグラブにボールを当てながら後逸した。レフトへボールが転々とする間に坂本は本塁に還った。公式戦ならば許されない失点シーンである。もうひとつは4回無死一塁からショートの中野が井上の真正面の絶好の併殺コースのゴロをグラブに当て弾いた。オールセーフの痛恨エラーで、このミスが2-3の逆転劇を呼び込むことになった。 高代氏は、「2つのミスはまったく質が違うものだが、どちらも防げるミス。野球にミスはつきものだが、防げるミスをいかになくすかを課題にしなければ」と指摘した。 「大山のケースは捕球していてもタイミングはセーフ。ならばタッチを急ぐよりもまず捕球が最優先。状況に応じて、何を優先すべきかの判断ができていない。見ていると、そこを誰も指摘していなかった。紅白戦なんだから、その場で、すぐに状況判断の間違いを指摘してやればいい。そういう積み重ねが守備の向上につながる」 一方の中野に対しては、「ルーキーの緊張もあるのだろうが、ボールを止めることを優先して足が動いていないとグラブを動かすハンドリングが固くなり、ああいうミスが起きる。守備練習を見ていても足の前の出が悪い」と、ミスの理由を分析した。 チームはキャンプ初日から元巨人の川相昌弘氏を臨時コーチに招き、2年連続でリーグワーストのエラーを記録した守備力の改善に取り組んでいる。3日間、教えられただけで効果が出るほど甘い世界ではないが、集中力を保った実戦の中でのトライ&エラーの積み重ねが必要になってくるだろう。次の紅白戦は7日に予定されている。