MIYAVI、Creepy Nuts…絶えぬコラボの理由 吉田兄弟、津軽三味線でデビュー25周年の今
「会社を分けるほど」別々に活動
しかし、2010年代後半は、吉田兄弟としてマスメディアに登場することは減りました。健一さんは「意図的に露出を減らしたわけではない」とした上で、この時期、新ユニットやプロデュース、作曲、音楽監督といった「おたがいの個人活動を増やしたのは事実」と明かします。 「当時はそれぞれの活動をするための会社を分けていたくらい。僕は流派を超えた津軽三味線集団『疾風(はやて)』を結成したり、文化庁文化交流使として訪れたスペインで津軽三味線講義をスタートさせ、その後も5年くらいバルセロナを拠点にして活動したりしていました。 もともと、僕たちは大会に出ればライバルでしたし、ソロアーティスト二人だったのが、ある意味では売り出し方として、兄弟ユニットになった面もあります。それぞれの道に行ったというよりは、もともと歩いている方向性が違ったんです」(健一さん) 良一郎さんも、楽曲制作やレコーディング、他のアーティストとの交流などを経ると、やはり「それぞれのカラーが出てくる」と認めます。 「僕も弟も、まさに(筆者注:吉田兄弟の演奏が国内外から高く評価される民謡の)『津軽じょんがら節』へのこだわりに通じるところなんですけど、津軽三味線の魅力を広めたいというところはもちろん同じなんです。ただ、そっちにどう持っていくかのルートが違うというのは弟もずっと感じていたんじゃないかな。 僕の場合は、津軽三味線を含めた和楽器、ひいては日本というのをもっと押していきたくて。純邦楽ユニットとして尺八や和太鼓の奏者たちと『WASABI』を結成、活動していました」(良一郎さん)
再び人気アーティストやアニメと
そうした期間を経て、20周年のライブ『吉田劇場2020』では再び二人でMIYAVIやCreepy Nutsといった有名アーティストとコラボし、その存在感を再び示しました。また兄弟での活動を再開した理由を、それぞれこう説明します。 「コロナ禍で考える時間もできて、『やっぱり僕らがなんとかしなきゃいけない』という危機感を持ったのが一番です。未だ和楽のジャンルで突出したアーティストが出てきていない中で、このままではジャンル自体が消滅してしまうかもしれない。 もう一度かつてのようなブームを起こす、その突破口を開くのは僕たちなんじゃないかという思いがすごく強くなっているのはありますね」(健一さん) 「自分で言うのはちょっと変ですけど、この期間を経て、津軽三味線の可能性だけでなく、自分の成長も感じてるんです。若い時の自分に、今は負けている気はしないです。 そうなると、また二人が合わさったときの今の吉田兄弟のパワーを、20周年、25周年っていうタイミングで、感じてほしくなったんですよね」(良一郎さん) また、2021年、津軽三味線を題材にしたマンガ『ましろのおと』がテレビアニメ化された際には、津軽三味線による劇中曲を吉田兄弟が監修、エンディング曲で加藤ミリヤさんとコラボしました。 もともと、原作の連載開始時から「一緒にやっていこうという話はあった」と健一さん。高校生が主人公のストーリーであり、関わるメンバーにも若手を選んだそうです。ここにも、個別の活動をしていた時期のプロデュース経験が反映されています。